12月1日に開通する首都高小松川ジャンクション下は、かつて「幻の私鉄」の駅があった場所だった。鉄道空白地域だった江戸川区周辺の資産家たちが作った城東電気軌道である。せっかく整備された私鉄が、たった25年ほどで消えてしまった理由とは?(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

小松川ジャンクション下に
存在した「幻の私鉄」の駅

首都高の小松川ジャンクション首都高小松川ジャンクションの小松川線合流部付近に、幻の私鉄「城東電気軌道」の駅があった Photo:PIXTA

 首都高速道路は10月18日、整備中の小松川ジャンクションを12月1日午後5時に開通すると発表した。首都高小松川線(7号線)と中央環状線(C2)はこれまで、交差しながらも連絡していなかったので、千葉から埼玉方面に向かうには都心環状線(C1)を経由せざるを得なかった。しかし今後は小松川ジャンクションで小松川線の千葉方面と中央環状線の埼玉方面が結ばれ、所要時間の短縮、周辺道路の混雑緩和、事故時の迂回ルートになることなどが期待されるという。

 この小松川ジャンクションの足元に、かつて私鉄の駅があったことをご存じだろうか。

 現在の江戸川区にあたる地域では、北端をかすめるように走るJR総武線(1894年開業)と京成電鉄(1912年開業)の2路線を除き、長らく鉄道整備が進まなかった。

 ようやく1969年に、地下鉄東西線東陽町~西船橋間が開通すると、葛西駅を中心に南部の開発が進み、都心近郊の住宅地としての性格を強めていく。しかし、区中央部を横断する路線は、1986年から1989年にかけて順次延伸開業した都営新宿線東大島~本八幡間を待たねばならなかった。

 ところが鉄道空白地域・江戸川区の歴史の中に、たったひとつだけ例外的に登場した私鉄があった。それが城東電気軌道である。

 城東電気軌道は1910年頃、現在の小松川や松江、一之江周辺の資産家が中心となって、錦糸堀(錦糸町駅前)から今井橋(江戸川区江戸川4丁目付近)まで結ぶ鉄道路線として計画されたことに始まる。

 当時の東京市の境界線は亀戸~錦糸町間の中間あたりだった。東京市が運営する「市電」は、市域の外れである錦糸堀まで整備されていたことから、錦糸堀以東に私鉄を整備することで、都心と江戸川エリアをつなごうという構想だった。