馬革の「コードバン」を一貫製造
世界でも珍しい姫路の小企業
皮革製品好きにとって「コードバン」は特別な響きを持った言葉だ。コードバンとは、馬の臀部から取れる希少な皮革であり、馬皮の中でも特殊な繊維層で構成されるため、しなやかで高い強度を持つ。「革のダイヤモンド」とも「キング・オブ・レザー」とも呼ばれる高級皮革である。
コードバンは使えば使うほど光沢が出て、その製品は「一生もの」と言われている。兵庫県姫路市に本社を置く新喜皮革は、このコードバンを一貫製造する国内唯一、世界でも同社の他に1社しかないというタンナーである。タンナーとは、原皮をなめして加工し、革をつくる製革業社のことだ。あらゆる皮革製品はタンナーの手による革でつくられており、タンナーの腕前が製品を左右する。
アメリカのタンナーは主に靴用のコードバンをつくっており、小物などあらゆるコードバン需要に応えられるのは世界で新喜皮革しかない。後述するが、子会社で「ジ・ウォームクラフツ・マニュファクチャー(TWCM)」という自社ブランドを持ち、皮革製品の製造販売まで行っているタンナーは世界でも珍しい。
イタリア、香港、スイス、アメリカなどの海外展示会にも積極的に出展しており、少しずつ海外からの注文が増えている。同社専務の新田芳希(48歳)はこう語る。
「昔から当社単独でイタリア中心に展示会には出していましたが、4年前から取引先の革問屋と当社を含めた国内のタンナー3社が提携し、一緒に出展するようになりました。革問屋が注文窓口を担当してくれるので、助かっています。スペインやフランスのシューズブランドが当社のコードバンを使っているし、アメリカのある有名ブランドメーカーからコードバンで小物をつくりたいという話も来ています」
マグロやブラックバスの
皮革製品も世界で初めて開発
新田はコードバンの他に趣味の釣りが高じて、近畿大学が生産するマグロと琵琶湖のブラックバスの製革にも世界で初めて成功し、2017年から財布などの小物をTWCMブランドで製造販売している。