世界に冠たる日本の家電メーカーが、凋落の一途を辿っている。経営統合、従業員削減、事業縮小、巨額赤字……漏れ聞こえるのは、あまりに過酷な現実ばかりだ。とりわけ、かつて「日本のお家芸」と言われたテレビ事業を手がけるメーカーの落日は、かなり深刻だ。
そんな今、日の出の勢いで世界を席巻しているのが、韓国メーカーだ。その中核を担うのが、世界中にその名を轟かせているサムスン。系列会社全体を含むサムスングループの2010年の売上高は、259兆6336億ウォン(約20兆円)。
なんと、韓国のGDPの20%以上を占めているという。アメリカの経済誌『フォーチュン』の世界企業ランキングでサムスン電子は22位(ソニーは73位)。この結果から見ても、その実力差はもはや歴然としている。
では、サムスン躍進の源はどこにあるのか? それに鋭く迫ったビジネス書が話題となっている。今年1月に発売された『サムスン式 仕事の流儀』(サンマーク出版)は、約4ヵ月で10万部を超え、その注目度の高さがうかがえる。
作者は、かつてサムスングループの中核企業でグループ長を務め、大きな実績を生んだムン・ヒョンジン氏だ。彼は、サムスンマンの強さの秘密を、圧倒的な人材の力とスピード感、そして努力の量にあると語る。
本書には、数年間で2日しか休まない猛烈型役員のエピソードをはじめ、出張帰りのほとんどのサムスンマンが、帰りの飛行機でパソコンを開いて仕事をしているエピソードなどが紹介される。そして、苛烈に働かなければ、爆発的な成果は生み出せないと綴るのだ。
さらに、話題になっている韓流本は他にもある。まずは、本国・韓国で180万部以上を売り上げたベストセラー『つらいから青春だ』(キム・ナンド/ディスカヴァー・トゥエンティワン)だ。本書は、ソウル大学教授の著者が、「青春とは痛くて当たり前」と若者たちにエールを送る自己啓発の書。
この他にも、とことん悩み抜き、自分を信じることで、真の自己を確立できると力強く説いた『媚びない人生』(ジョン・キム/ダイヤモンド社)がある。こちらも読者への熱いメッセージが溢れる応援歌だ。
これらの本を読んで、「韓国はすごいな。どうせ自分なんて……」と卑下することなかれ。『サムスン……』の訳者も、「1人1人の資質ではなく、“やり方”を変え、努力することによって変えることはできる」と語る。
要するに、必要なのは能力や資質ではなく、気概や覇気、覚悟、そして圧倒的な努力ということになるのではないだろうか。
猛烈なグローバリゼーションの嵐が吹き荒れる今、どうにも萎縮している感のある日本の若者たち、そしてビジネスマンたちが、これらの作品に触れて、己を奮い立たせる……。まさに激辛のスパイスとして、読者の心に強烈な直球が届き、それが読み手を激しく鼓舞しているように感じられて仕方がない。
(田島 薫/5時から作家塾(R))