今年1月、米国の国際家電見本市を訪ねたサムスンの李健煕会長
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 韓国の大手電機メーカー、サムスンの日本法人の、不思議な人事が業界内の話題を呼んでいる。

 発表があったのは昨年12月7日のこと。日本サムスンの代表、尹晋赫(ユン・ジンヒョク)氏(本社副社長級)が、韓国最大の警備会社で、サムスンとセコムの合弁会社「エスワン」の社長に栄転した。

 日本サムスンの前身は1975年に設立。ソニーやパナソニックなどを目標とし、いまや世界的電機メーカーに成長したサムスングループにあって、その位置付けは特別なものだった。

 なぜなら、日本の電機メーカーは半導体や薄型テレビ向けの液晶パネルなど部品を買ってくれる「お得意さま」であり、先端技術を研究し、日本人技術者のヘッドハンティングをするにも重要な拠点だったからだ。

 ところが、である。尹氏の後継者となる、5代目のトップが発表されなかったのだ。

 まもなく、韓国に帰った尹社長が、日本サムスンの社長を兼務するという異例の新体制が明らかにされた。これは35年以上の歴史で、初めてのことだという。

「もはや、専任の“社長”を置く必要はないという判断をしたということだ」と、業界関係者たちは口をそろえる。

 実際、日本の家電メーカーのシェアが落ちるにつれて、部品などの販売規模も縮小。「日本人技術者のヘッドハンティングも、やり尽くしたのでは」(人材あっせん会社幹部)という声もある。

 これが日本法人の社長が兼務職になった理由だとされる。

 一方で、これまで日本メーカーの牙城であった国内家電市場には、本格参入する。

 そのシンボルが、年内にも発売されるとみられる次世代の有機ELテレビだ。もし実現すれば、日本メーカーに先んじてハイエンドの商品を投入することになる。「サムスン=高級品」のイメージづくりに挑むのだ。

 もう日本の家電メーカーは追い越した──。新体制には、そんな自負心も反映しているのかもしれない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義)

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