「場面緘黙という言葉を聞くまでは、父親と一緒に“しゃべんなきゃダメだよ”と息子に言ってきて、かなり傷つけていたんじゃないかなって…」

 当時地方に住んでいたDさんは、高校を卒業した息子が東京の大学に合格したのを機に、「環境が変われば、自立するのではないか」と考えた。

「生活面はきっちりしている子だったので、期待をかけて下宿に送り出したんです。ところが、5月の連休明けころから行けなくなって、下宿にいたようです。夏休みには実家に帰ってきたので、普通に生活してるんだなと思っていたのですが…」

 その後、大学から、成績通知が送られてきて、まったく学校に行っていないことがわかった。

 半年ばかり休学し、息子に相談すると、「復学したい」という。そこで、Dさんが下宿先で、一緒に生活。本人は「とにかく単位を取って、卒業したい」というのが目標だったので、親としても叶えさせてあげたかった。

 大学のほうでも「教育相談」というカウンセリングがあり、親子で通った。

「しゃべれなくなった原因をカウンセリングしながら、過去を振り返っていく。その作業が、自分の嫌な場面を思い出すみたいで、本人は行かなくなってしまった。何とか、社会とつながりを持たせてあげたいと思ったのですが、本人から、カウンセリングは“無駄だ”と言われて…」

 大学を卒業した後、このまま人と話ができなければ、社会とつながることができない。

「今後、ちょっとだけでも、何でもいいから、社会と関わりが持てるようになってほしいという思いです」

 そうDさんはいう。

 そんな当事者本人や家族、教育関係者、支援者などが集まる「かんもくの会」では、それぞれが抱える悩みや問題などを情報交換しながら共有し、社会に訴え、解決に取り組む活動を続けている。

「社会にもっと認知してもらいたい」と、家族たちは口をそろえる。周囲の大人たちは、どう対応すればいいのか。次回も、「緘黙」について紹介したい。