依存症に詳しい東京都新宿区のアパリクリニック理事長、梅野充氏は「家庭を顧みず生きてきた人ほど、アルコール依存症を発症しやすいといえます。家族から愛想をつかされ、頼れるものがアルコール以外なくなってしまうからです」と警鐘を鳴らす。

 自由な時間はうんざりするほどあるが、妻について歩くと“ぬれ落ち葉”と疎まれる。孤独を慰めようと、つい手を伸ばしてしまうのがお酒だ。次第に酒量の歯止めがきかなくなり、ストレスを和らげるどころか、いつのまにか心と体がむしばまれていくことになる。

 かたくなにグラスを手放そうとしない彼らの言い訳は、「酒は百薬の長だから大丈夫だよ」というもの。

 確かに、非飲酒者に比べ少量飲酒者のほうが虚血性心疾患、脳梗塞、2型糖尿病のリスクが低く、総死亡数も少ない、とする研究結果もある。ただし、この傾向が認められるのは先進国の中年男女のみ。悲しいかな、シニアには当てはまらない。
※飲酒とJカーブ(厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト)

 同じ飲酒量でも、高齢者は血中アルコール濃度が高まりやすい。アルコールに対する中枢神経の感受性も上昇しがちだ。昔、酒豪で鳴らした人も、年をとれば自然とアルコールに弱くなっていくものなのである。

“マッチョな価値観”が
アラフォー女性をお酒に走らせる!?

 シニアが飲酒に走ってしまう理由のひとつに、昔から日本に根づいてきた “マッチョな価値観”があるのでは、と梅野氏。

「日本社会は長年、『男はがっつり稼いでおおいに飲むもの』という価値観に支配されていました。“酒は呑め呑め呑むならば”という一節で知られる民謡『黒田節』は、長いやり、大きな杯を持って舞います。やりとともに、杯もまた男らしさの象徴だったのです」

 ただ、近年は年功序列や終身雇用も崩れ、「一家の大黒柱は男」という価値観自体、成り立たなくなってきた。「晩酌する夫と、かいがいしくつまみを作り、酌をする妻」といった茶の間の光景も現代家庭ではあまり見られないのではないだろうか。若い男性がお酒を敬遠するようになったのも時代の変化といえるだろう。

 しかし、男性的な論理に支配されてきた企業組織では、いまだに“マッチョな価値観”に振り回されてしまう人も少なくない。 たとえば、厳しい就職氷河期を潜り抜けてきた40代女性は男性社会で揉まれ、男性に負けじと頑張り続けてきた。

 先述の平成29年国民健康・栄養調査によれば、40代女性における飲酒習慣者は14.8%。平成元年の同調査では8.8%にすぎなかったが、増加傾向をたどっている。