賢い中国をあなどるな

出口 そうです。僕は、中国は共産党支配の国ではないと思っているのです。
 中国は科挙以来のエリート官僚の支配する国です。
 共産党の若いエリートはかなり勉強していて、人格者も多いので、他の国とは「大局観」が違います。
 僕は1995年から3年間、保険の仕事で中国政府と直接ネゴ(交渉)をしていて、毎月、北京、上海に通っていたのですが、仲よくなってきたら、酒を飲んで、英語でなんでもいい合えました。
「数年前にソ連が壊れたよね。中国は何年ぐらいで壊れるの?」
と聞いたら、共産党の若い幹部は、
「出口さん、なんでソ連が壊れたか、その理由を何も知らないんだね」
と返してくる。
 こちらも負けずに、
「いや、知っているよ。やっぱり共産主義という考え方自体がマーケットメカニズムに合わないんだよね。
 人間が賢かったら共産主義でもいいんだけれど、人間はアホなので、計画経済では市場はうまくコントロールできないんだよね」
といったら、
「それは違う」
というのです。向こうがいうには、
「ロシアが壊れたのは、読む本がなかったからだ。ドストエフスキーなど文学は多少あったけれど、歴史が浅く、長い間、モンゴルに占領されていた。たかだか国としてはが400〜500年くらいの歴史しかない。だから読む本がなかったのだ。
 対する我々は4000年の統治の歴史を勉強している。つぶれるはずないじゃないか」
といって大笑いしていた。
 こういう賢さを持っている国が中国なのです。
 みなさん、あなどってはいけませんよ。
 日本の新聞雑誌メディアが悪いのですが、「中国は共産党支配でけしからん」という報道に終始し、実態を率直に見ていない。
 今の中国は超エリートの支配する管理大国、科学技術大国です。

――よくわかりました。ありがとうございました。