『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』の著者でクレーム対応のプロ、山下由美さんがこれまでにない画期的なクレーム対応の話しかたを初公開。「怒鳴る」「キレる」「自分が正しいと言い張る」「理詰めで責める」「言い分が見当違い」「多人数で取り囲む」「シニアクレーマー」などあらゆるお客さまからのクレームを、たったひと言「そうなんです」と言わせるだけで解決します。

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もしもちょっとした事故で多額の金銭を要求されたら……

 誰にでもミスはあります。そして、こちらのミスでお客さまに実害が生じた場合、謝罪だけではなく、その実害に見合った金額で償うのは当然のことです。

 しかし、暗に多額の見舞金を求められ、相手の態度にひるんだり、しつこさに根負けたりして、法外な金額の支払いに応じてはいけません。噂が広がれば、新たな悪質クレーマーを招くことにもなりかねません。

 重要なのは、普段からあらかじめ事故やトラブルを想定し、どこまで補償するのか、会社やお店として、きちんとフレームを作っておくことです。

 フレームを決めなかったばかりに、払わなくていいお金を支払ってしまった事例をご紹介しましょう。

ケース:1万円の見舞金が50万円に

 ある老舗旅館でのことです。建物の老朽化もあり、これまでに何度か増改築を重ねてきました。そのため、館内の一部に段差があり、来館された妊娠中のお客さまがつまずいて転んでしまいました。

 支配人が呼ばれ、「お前はここに段差があるって知ってたのか?」と聞かれました。支配人は「はい。申し訳ありません。すぐ病院へ」と、すぐ救急車を呼び、病院まで一緒に付き添いました。

 幸いにも、妊婦本人に怪我や流産の心配はなく、胸を撫で下ろして旅館へ送ろうとすると、同伴していた父親が怒り始めました。

 「ちょっと待て。子どもの命が危なかったのに『よかった』では済まされないよね?」
 「はい。申し訳ありません」

 支配人は旅館に連絡して、1万円の見舞金を包んだ封筒を用意しました。ところが、父親は受け取らず、暗い病院の待合室で執拗に責任を追及し続けます。3万円、10万円、30万円と見舞金を増額しても、手に触れようともしません。

 最終的には、50万円包んだ時点でやっと、「まあ、今回はこれで良しとしましょう」と言って、見舞金を受け取ったのです。

 こうしたケースの難しいところは、初めから悪質クレーマーとは決めきれないところです。後から考えると、金品目的にわざと転んだ気もしますが、証明はできません。それに、段差を放置していた旅館にも責任があります。それだけにツイッターなどにアップされれば、大きな痛手を被りかねません。