休暇中はスマホもPCもオフ
仕事とプライベートは分けよう

 こまめに休みをとっているにもかかわらず、スウェーデンの1人当たりのGDPはこの30年、右肩上がりの上昇カーブを描いているとビューエル氏は言う。人口は日本の10分の1にもかかわらず、世界第23位という地位を築いているのだ。積極的に休みながらも、生産性は落とさない。一体その秘訣はどこにあるのか。

「フィーカの目的は、リフレッシュとコミュニケーション。職場では社員が一緒にフィーカすることもあれば、個別で休むこともあります。職場でのフィーカの場合、おのおのがマグカップに飲み物を注ぎ『たわいもない』おしゃべりに身を投じて休みます。このたわいもないおしゃべりというのが、フィーカにおいては大事なのではないかと思っています」

 こうした北欧の「コミュニケーションありきの休養」が作業効率を上げ、かつストレスを軽減させているのではないかと、ビューエルさんは仮説を立てる。

 しかし、おしゃべり好きとされるスウェーデン人と日本では国民性も大きく異なる。会社の休憩時間ぐらい、1人で静かに過ごしたいと考える人が大多数なのではないだろうか。休み下手といわれる日本人にとっての上手な「フィーカ」とは、どのような方法だろう。

「逆に日本人はコミュニケーションをうまくシャットアウトできると、より心が休まると思います。たとえば休暇中はスマホを見ない時間を設け、仕事関連の電話やメールは完全にオフにしてみる。北欧の人たちは基本的にしっかりお休みを取るので、休暇中は基本的にどんなことがあっても仕事の電話には出ませんし、メールは自動返信。休暇とは完全に『オフ』を楽しみ、プライベートと切り離しているんです」

 日本では休暇中にもかかわらず会社のメールをチェックし、時にはPCを開いてバケーション先でもお構いなしに作業をする人が少なくないはずだ。ワークライフバランスを意識するようになったとはいえ、それでもやはり休日も仕事のことが気になり休んだ気になれない…とこぼす人は少なくない。北欧人が仕事とプライベートを潔く分けられるのは一体なぜなのか?

「それは日本文化の中にある『空気を読む』とか『常識』という、ある種暗黙の了解的風習やそれにまつわるプレッシャーがないからだと思うんです。多くの情報やトレンドが海外からリアルタイムで流れ込んでくる状況にあっても、なかなかそれを手放しで受け入れられないつらさが日本社会にはあります。北欧では若者の間でもパーティーの前に全員のスマホを没収して、どんなに携帯が鳴っても出ない、というルールを設けている人々がいます。今一緒にいる人とのリアルな時間を楽しむためです。休暇だってそうできたら一番いいですよね。スマホの登場によって私たちは24時間会社とつながれるようになってしまった。そのことが、義理堅い日本人の息苦しさにさらに拍車をかけているのかもしれません」

 私たちの「フィーカ」はスマホを手放し、目の前の人間関係や景色を、画面ではなく肉眼を通して楽しめるようになったときに始まるのかもしれない。