「生活保護があってよかった」

クリスチャンである吉田さんは、教会でもらったパンフレットを大切にしている。小さなテーブルの上には、日用品と一緒に教会の機関誌が置かれていた。
Photo by Yoshiko Miwa

 その時、吉田さんはネットカフェの店舗に置いてあった貧困者支援団体のビラを見て、生活保護について知った。

 どう考えても、今すぐに、また働くのは無理だ。クリスチャンである吉田さんは、ときどき礼拝に顔を出している教会の神父にも相談してみた。「どうしたいですか?」という神父の問いに、吉田さんは「できれば一から出直したいです」と答えた。神父は「それなら、お手伝いします」と言った。

 しかし、すぐに生活保護を申請したわけではなかった。吉田さんは、なるべく生活保護を受給することなく、なんとか自力で頑張ろうとしたのである。まず、社会福祉協議会の相談所で「つなぎ資金」を申請した。しかし手続きが長引き、手持ちの現金が底をつきそうになった。緊急時に無料で宿泊できる東京都の宿泊所に1週間だけ宿泊し、時間を稼いだ。その間も「働かなくては」と考え、仕事を探そうとした。できれば住み込みの、できれば正社員待遇の仕事を。しかし、履歴書に書く「現住所」はなかった。

 吉田さんは、宿泊所のスタッフの勧めで、福祉事務所に相談に行った。ケースワーカーから見ても、困窮は明らかだった。そのケースワーカーは、

「すぐ働くのではなくて、1ヵ月か2ヵ月、落ち着いて考えてみたら?」

 と言い、生活保護の申請を受理した。

 2010年末、吉田さんは生活保護受給を開始した。しばらくは山谷の「宿屋さん(簡易宿泊所)」の2畳の部屋に仮住まい。ほどなく、アパートを見つけて入居することができた。

 落ち着いた生活の基盤を手に入れた吉田さんは、歯科に通院しはじめた。それまでは、虫歯を治す余裕もなかったのだ。吉田さんは生活保護について、

「ありがとうございました。あってよかった」

 と、実感をこめて語る。

職歴の空白と転職回数がネックに
再就職への厳しすぎる道のり

 2011年春、一息ついた吉田さんは、ハローワークで就職活動を開始した。業種は、清掃に絞った。過去に清掃の仕事をしたことがあったので、「これならできそうだ」と思えたという。履歴書を送った会社は数十社。面接を受けることができたのは、そのうち十社程度であった。