音楽教育という観点でいえば、もちろん日本でも学校教育の中にクラシック音楽は入っているが、松田氏が彼我の差を最も感じるのは「オペラの扱い」だという。

言語文化圏を越えて
中国で盛り上がるオペラ

 1600年頃、古代ギリシャの演劇を模倣するかたちでイタリアのフィレンツェで誕生した歌劇、オペラは、クラシック音楽の始まりとされる。クラシック音楽の歴史を紐解くと、オペラやバレエの伴奏だった器楽演奏が、脇役から主役になっていったという流れがある。というのも、オペラは「歌」がメインなので、イタリア語という言語文化圏を超えて広まっていくのは難しい。

 また、歌劇の出演者が多く、舞台美術も必要なため、上演コストが高くつく。そのため、興行主も器楽演奏を優先しがちになる。聴衆にとっても、日本でもオペラ鑑賞は、オーケストラに比べるとレベルが高く近寄りがたい印象があるのは否めない。

 しかし、「中国では学校教育でもクラシック音楽の発祥であるオペラをしっかりと教えている。深センでは、教育プログラムの一つとして深セン交響楽団や深セン音楽庁が親子向けのオペラ公演を主催していて、必ず満席になります。北京のインターナショナルスクールでは、ウィーン少年合唱団やウィーン国立歌劇場のメンバーを招聘し、一緒にオペラの『魔笛』を舞台で演じるという、なんとも贅沢なクラスがあるそうです」と松田氏は言う。

 深セン交響楽団の音楽監督、リン・ダーイエ氏は「情熱的なイタリア音楽と、中国人のパッションが合うのではないか。もっとオペラ関係のワークショップなどを増やしたい」と話す。世界で活躍する中国人のオペラ歌手は増えているが、そんな海外で学んだり活躍している中国人声楽家が、休暇などで母校に戻ってくるたび、後進の指導にあたるという好循環もあるという。

 さらに深センでは現在、南頭半島の先端、深セン湾を挟んで香港に面した地区に、新たにオペラハウスの建設計画が進んでいる。完成時期は未定だが、計画通りなら世界最大級の劇場となりそうだ。