コンサート終了の時刻には
閑散の東京オペラシティ

「環境は人を育てるといいますが、本当にそうだと思いますね」と松田氏。教育環境もさることながら、広い意味での都市環境も重要だ。

 深センでは、壁がガラスの多面体で構成され、夜には美しくライトアップされる深センコンサートホールが有名だが、「コンサートホールから外に出ると、きらびやかな高層ビルが目に飛び込んでくる。あの環境で聴くからか、音色も豊かで輝かしく感じる。街全体で音楽を楽しむという雰囲気に満ち溢れている。これは欧米も同じです。ところが日本は……」と、松田氏は日本のコンサートホールの“周辺環境”について苦言を呈する。

 典型的なのが、オペラ劇場を含む3つの劇場を擁する新国立劇場。東京オペラシティという高層複合ビルに入っているが、入居している飲食店の多くは、ラストオーダーが21時から22時30分だ。21時までの公演が終わり、アンコールを経てホールを出て食事をしようにも慌ただしいことこの上ない。また、建物の外に出て余韻に浸ろうにも、眼の前はただ車が行き交うだけの殺風景な甲州街道と首都高速4号線。その割にタクシーは捕まらない――。

「ヨーロッパやアメリカならオペラが終わっても夜中の3時くらいまでレストランが営業しています。芸術を楽しむというのはそれも含めてのこと。中国もそれができるし、韓国だってそうです。もともと貴族らが集う劇場というのは、社交の場であり、ビジネスの場としても活用されていたわけですから。それに比べ、日本は新国立劇場だけでなくサントリーホールにしても、コンサート後の体験がシャビー過ぎます」(松田氏)

 こうした、総合的な芸術の楽しみ方や、オーケストラとホール、街の“あり方”についても、中国は「欧米からよく学んでいる」と松田氏は評価する。

 例えば、欧米には歌劇場と「座付きオーケストラ」とがセットになっていることが多い。