テストステロンを体内に注入!
そして、何が変わったか……!?

隣りの部屋では、例によって美人看護師さんが待ち構えてくれていました。金属のトレイの上には、開封された小さなアンプルとその中身が入っている注射器。私の名前などが書かれたメモや注射したあとに貼る絆創膏もあります。

アンプルには「テスチノンデポー 筋注用250mg」の文字。これに男性ホルモンが詰まってるんですね。
Tシャツの袖をめくって、肩のあたりをガーゼで消毒。ひんやり感じている部分に「ちょっと痛いですよー」の声とともに針が刺されます。男性ホルモンが徐々に体内に注入されている実感は……さすがにありません。

注射のあとで、ふたたび先生の診断。先生によると「早い方は、その日のうちに気持ちの変化が表われます」とのこと。個人差はあるでしょうけど、帰りに地下鉄の階段を二段飛ばしで駆け上がるとか、家に帰ったらすぐにスクワットをしたくなるとか、原稿を書く意欲がモリモリ湧いてきて久しぶりに徹夜してしまうとか、そういう展開を期待したのですが……。

結論から申し上げると、残念ながら劇的な変化はとくになかったような気がします。たぶん、期待をふくらませ過ぎたんだと思います。今のところ健康状態に問題がなく、男性ホルモンの量も「ほどほど」だったせいもあるでしょう。むしろそんなに簡単に別人のようになれたとしたら、それはそれで危険な香りが漂ってしまいます。

ただ、何の変化もなかったわけではありません。仕事に対するヤル気は、少なめに見積もって2割ぐらいはアップした気がします。長く放置していた単行本の原稿に取りかかったり、いつも書き始めるまでに30分ぐらいはウダウダしてしまう原稿も、15分ぐらいのウダウダでスタートできたりしました。いや、そもそもが怠惰すぎるとも言えますけど。

対人関係については、それまでもわりと積極的な方だと思ってはいましたが、行くかどうか迷う感じの集まりに顔を出す気になるとか、ご無沙汰している人に久しぶりにメールしてみるとか、行動を起こしたあとで「あれ、これってもしかして男性ホルモンのおかげ?」と思ったことが何度かありました。

補充後には
女性を見ると、ときめきが!

あと、これは言い方を間違えると誤解を招くし、あまり詳しくお話しするのもはばかられますけど、女性を見たときの感情に変化があったのは確かです。電車にきれいな女性が乗り合わせたとき、道で見事なプロポーションの女性とすれ違ったとき、テレビや雑誌などで好みのタレントさんを見たときに、胸のときめきを頻繁に感じるようになりました。

仕事に対するヤル気だけでなく女性も、2割増しぐらいできれいに見えるようになった気がします。

結果的に、劇的な変化はありませんでしたが、「こんなことなら打たなければよかった」とはカケラも思っていません。打ってよかったです。また現在、自分の体や心に大きな問題はなさそうだと、はっきり自覚しました。期待が大きすぎただけで、それなりに変化があったわけですから、ちゃんと効いたという見方もできます。

今後、気持ちの面や体調の面で元気がなくなったら、男性ホルモン値の低下を疑ってみて必要なら男性ホルモンを補充すればいいという安心感も得られました。

今後の人生を楽しく生きていく上で、大切な、そして頼もしい「アイテム」を手に入れた気分です。注射を体験してから、半年ぐらいたちました。じつは近ごろ気持ちが沈みがちで、仕事の効率も下がっています。またそろそろ、自分の中の「テストステロン」の声に耳を傾けたほうがいいかもしれません。