「土下座しろ!」と強要されるパターン

 土下座を要求する悪質クレーマーも後を絶ちません。実際、私のセミナーで出会った生徒の半数くらいは、「その場が収まるなら仕方ない」と思って土下座したことがあると言っています。もちろん、みなさん、喜んで土下座をしているわけではありません。一方で、土下座を断ったことで、相手が怒りをヒートアップさせることも少なくありません。

 土下座への対応の一つの指針となるのが、2013年、衣料販売チェーン『しまむら』の客が店員に土下座をさせ、その画像をネットに掲載した事件です。この時、土下座をさせた客は強要罪で逮捕されました。些細なトラブルを口実に土下座をさせることが、強要罪になり得ることが示された事例といえます。

 もちろん、土下座で解決するならと、さっさと頭を床につけることがダメだとは言いません。ただ、基本的には、飲食店や小売店での通常の接客で起きたトラブルで、そこまでする必要ないのではないでしょうか。

 このように土下座を迫られたら、応じるか応じないかは難しい問題です。やはり、お店や会社でフレームを決めておくべきでしょう。スタッフ個々の判断にゆだねるのではなく、お店や会社としてどうするかを決めておいたほうが、現場は対応しやすいはずです。

 たとえばフレームで「土下座の要求には応えない」と決めておき、前述のYES言葉を引き出すようにしたり、場合によっては金品による解決法を提案したりしても、土下座を要求してくるようなら、「当店では、これ以上の対応は規定上いたしかねます。ご納得いただけない場合は、専門スタッフが法に基づいて対応させていただきます」ときっぱりと断るようにしましょう。