鳩山一郎元首相は政治家
としての真骨頂を示した

――しかし、今の政治家からはあまり強い信念が見えてきません。辞任した鳩山由紀夫首相に信念の強さを感じましたか?

 昔の人ほど感じないです。失礼な言い方かもしれないが、いまだに母上から政治資金をもらっている「良家の子弟」という印象が拭えません。

 お父上の鳩山威一郎氏(元外務大臣)は、私の東大(東京帝国大学)の同級生でした。(由紀夫首相を)祖父の鳩山一郎元首相と比べれば、雲泥の差と言ってもいいかもしれない。一郎氏は、明治・大正を通じて鳩山家が持ち続けていた政治的な遺伝子を、明確に持っている人でした。

 彼は、軍部に対抗して、官僚政治家ではなく政党政治家としての真骨頂を、政策においても政治的態度においてもはっきり持っていた。しかし、孫の由紀夫氏になると、やはりそういう面は見えなかった。

――その「弱さ」は何が原因なのか? 時代の流れで仕方ないことなのか? 政治家としての鍛錬が足りないのか、それともポリシーが弱いのでしょうか?

 個性の弱さでしょうね。一郎さんは、明治以来の典型的な政治家でした。原敬も浜口雄幸も、戦前の首相には暗殺された人も少なくなかった。そういう場面を目の当たりにしているから、昔の政治家は強かったのでしょう。

 彼らには、「暗殺も凶弾も恐れず」という気概があり、政治に身を奉げる気持ちや、一心不乱に努力する姿勢が、今の政治家とは比べ物にならないほど強かった。

 戦後の首相では、石橋湛山さんも印象的でしたね。彼はいわば「禅坊主」のような人で、政治家としての権威を持つ前に、人間としての権威を持っていた。

 もともとジャーナリストだったこともあり、戦前軍部に面と向かって抵抗していた根性の座り方は、戦後のGHQ(占領軍最高司令部)に対しても変わらなかった。今の時代に、あれだけの信念を持った人は、そうそういないですよ。