進化を続けるITの中でも、モバイルとクラウドは最もホットな領域だ。シトリックスは、デスクトップ仮想化やアプリケーション仮想化といったソリューションの提供を通じて、この分野をリードしてきた企業の一つ。最近では、オープンソースのクラウド構築・運用ソフトであるCloudStack開発プロジェクトの主要な支援者としても注目されている。モバイルとクラウドの融合を通じて、シトリックスが実現しようとしている価値は、人々のワークスタイルや企業経営にとってどのようなインパクトがあるのか。7月に行われた 「Citrix iForum」に参加するために来日した、CEOのマーク・テンプルトン氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン IT&ビジネス)

現代を説明する2つのキーワード
VUCAとライフスライシング

――まず、ビジネス環境に対する認識から伺います。いま、どのような変化が起きているとお考えでしょうか。

Mark Templeton
シトリックス システムズ 社長兼CEO
ノースカロライナ州立大学デザイン学科卒。バージニア大学ダーデン経営大学院でMBAを取得。1995年に、マーケティング担当バイスプレジデントとしてシトリックス システムズに入社。98年に社長に就任し、2001年からCEOを兼任。
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「VUCA」という言葉があります。Volatility(変動性)とUncertainty(不透明性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)をまとめたものです。もともとはNATO(北大西洋条約機構)で使われ始めた軍事用語ですが、現代の状況を表す上で非常に的確な表現だと思います。何が起こるか分からない世界において、私たちは適切に反応していかなければならない。非常に厳しい環境ではありますが、それが現実なのです。

――人々のライフスタイルやワークスタイルの観点では、どのような変化に注目していますか。

「ライフスライシング」と呼ぶ現象が進んでいます。従来の一般的なワークスタイルは、決まった時間をオフィスで過ごし仕事をするというものでした。しかし、最近は在宅や移動先で仕事をする人が増えています。人々の時間はスライスされ、ワークとライフを交互に行き来するというワークスタイルが広がりつつあります。

 そこで、重要になるのが両方をシームレスに、最短距離でスムースにつなぐということ。それにより、ワークとライフを調和させ、人々はこれまで以上にシンプルにかつパワフルな働き方ができます。

 一方、コンピューティングの世界でも、大きな革新が起きています。とりわけ重要なのが、モバイルとクラウドの進化です。それは、ライフスライシングという動きと相互に影響を与え合いながら進行しています。

 従来のワークスタイルは「オフィスに来て、決められたPCを決められた場所で使う」というものでしたが、この常識が変わろうとしています。