デロイト トーマツ コンサルティングの日置圭介氏が、グローバル企業のコーポレート(本社)機能について語り合うシリーズ対談。その第3回に登場していただいた日本オラクル・野坂茂副社長と、日本経済を牽引する次世代リーダーの意識や資質、打つべき次の一手について熱く議論を交わした。
業績がいいときにこそ
大胆な改革をすべき
日置:まずは、「次世代経営リーダー育成塾」(『ダイヤモンドクォータリー』誌主催)で、野坂さんが参加者の人たちと話をした感想から聞かせてください。
日本オラクル 取締役 執行役副社長
最高財務責任者
丸紅、アップルコンピュータ、日本通信上席執行役員最高財務責任者などを経て、2002年4月日本オラクル入社。同年8月取締役常務執行役員最高財務責任者ファイナンス本部長、04年6月取締役専務執行役員、11年6月から現職。
野坂:既存ビジネスの経営効率を高める一方で、海外企業を含めて他社をベンチマークとしたときに、利益率や将来性が低い事業を売却するなど、ポートフォリオの入れ替えが必要だと考える方が多い印象を受けました。
そうした重要な意思決定をサポートするのがコーポレートの役割ですが、意思決定の土台になるデータの粒度や経営層に提供するまでの時間など、改善すべき面が多々あるようです。
そのため、サポートファンクションとしての力を十分に発揮できていないことに、責任と焦りを感じているように見受けられます。
日置:「これから自社は何で収益を上げていくのか」。この問いは、育成塾でのグループディスカッションの前提として、最初に参加者に考えてもらいました。多くの日本企業がこの解を模索しています。そして、長期的な視点で限られた経営リソースをどう配分していくかを考え、判断するのが経営者の最も大事な仕事です。
コーポレートスタッフの主な役割はこの経営行動のサポートになりますが、それが果たせているのか、果たせるようなケイパビリティーを備えているのか、悩みは深いようです。
ただ、下から上がってくる情報に基づいて意思決定をしているだけでは、経営者として十分な仕事をしているとはいえません。経営トップが企業像、事業像をどれくらい具体的に持っているのかも大きな問題です。
野坂:オラクルでは、意思決定に必要な情報が経営トップへタイムリーに届けられる、いわゆる「データドリブン」な経営システムになっています。
現場で日々起きていることを吸い上げてすぐに処理するシステムがないと、データの2次加工、3次加工が必要になり、経営トップに情報が届くまで、いろいろなバイアスが入ってしまいます。
人事面では、経営者はもちろんコーポレートスタッフも、こういうスキルセットを持った社員がグループ企業含め、どの部門や役職にいるとか、この事業のキャッシュフローが今こうなっているなどの情報をすぐに見られる状況にしておいた方がいい。
また財務では、この事業の将来のシナリオはAとBがあり、Aは何年後かに汎用品になってしまって利益が出ない、Bは競争力を維持して成長を続けている、それらのシナリオの前提となる事象、根拠となるデータはこれだと。シナリオとデータをセットでコーポレートスタッフが上げて、経営者がそれを意思決定の羅針盤として使う。そういうプロセスが必要でしょうね。
グローバル企業のトップは今、アジリティー(俊敏性)とセキュリティー、デジタルの3つのキーワードで動いている。日本企業のトップもセキュリティーにはみんな関心を持っていますが、アジリティーとデジタルへの対応については改善の余地があります。