デジタルの普及と革新的イノベーションの出現は、次世代のエネルギー業界にどのような影響を与えるのか――。KPMGジャパンが主催するラウンドテーブル・セミナー「Advanced Innovative Technologyのエネルギー事業への応報」がこのほど開催された。基調講演にはフューチャリストのマイク・ウォルシュ氏が登壇。幅広いビジネスリーダーに向けて、破壊的技術変革の時代に、いかに成功のための舵取りを行うのかについて、アドバイスを提供した。当日の内容を踏まえ、個別のインタビューに応えてもらった。
1年のうち300日は世界を旅して
企業革命家にインタビューを行う
――フューチャリストとして未来を予測し、ビジョンを提示することは非常に難しいことだと思いますが、これを実践するために、どのような活動を行っているのですか。
ニューサウスウェールズ大学コマーシャル&メディア学部/法学部卒業。デジタル系のコンサルティング会社XT3などを経て、豪州でジュピター・リサーチを設立。2004年~2006年までニューズ・コーポレーションで戦略立案とマネジメントを担当したのち、戦略アドバイザリーファーム、Tomorrowを設立し、フォーチュン500を含むグローバルな大手企業のリーダーにアドバイスを提供している。プライベートでは写真愛好家として出版も行う。
マイク・ウォルシュ(以下略) リサーチに多くの時間を費やしています。1年のうち300日くらいは世界中を旅して、多くのサイエンティストやビジネスリーダー、企業革命家などにインタビューを行い、世界に革新をもたらすようなアイデアや力がどこにあるのか理解しようと努めています。
どの国の、だれにコンタクトするかは、毎回、計画しているわけではありません。革新的な技術や考えを持っている人を追っていくと、その周辺にいろんな人が数珠つながりで見つかるというケースもあります。
彼らとのインタビューを通じて私が学んだことは、未来というのは必然的に生まれるものではないということです。それは、単なる技術の進化によってもたらされるのではなく、私たちが行う意思決定によって生まれるのです。その意味で、未来を予測するには、人間の行動変化や文化的背景についても考慮する必要があります。
――一貫してテクノロジーやメディア、デジタルに関連する戦略コンサルティングを提供してきましたが、フューチャリストになったきっかけは何だったのですか。
2000年代の初め、ルパート・マードック氏のニューズ・コーポレーションに所属し、中国、韓国、日本に頻繁に訪れていた経験が大きいかもしれません。当時はまだiPhoneが登場する前です。なかでも、日本に滞在している間は、いつも未来を旅しているような気持になりました。日本のみなさんにとっては意外に聞こえるかもしれませんが、いまでも多くのトレンドやアイデアは日本発のものが多くあります。それは必ずしも日本の会社が商業化に成功するとは限りませんが、生まれるのは日本です。そして日本は、世界で最も洗練された消費文化を持っています。
――フォーチュン500のグローバル企業や日本の富士フイルムを顧客に持ちます。また、ウォルシュさんの講演に、世界中のリーダーが「洞察に満ちた力強い内容だ」「多くの気づきがあった」と高い賛辞を送っていますが、彼らはウォルシュさんに何を求めていると思いますか。
多くのビジネスリーダーは、技術の変化を恐れているのではなくて、それによって、世のなかがどう変わるのかについて恐れを抱いています。そうした理由で、私の話を聞きたいと思っているのかもしれません。革新的技術によって、自分たちのビジネスがディスラプト(破壊)され、AIやロボティクスに仕事が置き換わってしまうということを知ったところで、問題が解決するわけではありません。それより重要なのは、自分たちは何を変えていくか、そのためにどういった技術を活用していくかを知ることです。
――優れた経営者は未来を予測し、持続可能な成長を実現するために、フューチャリストであるべきですか。
フューチャリストとまでは言わなくても、自社の将来、そして社会をどういうふうにしていきたいのかについて、強力なビジョンを持つべきだと思います。