「ウクライナゲート」には、その前の「ロシアゲート」と同様、国内のスキャンダル以上の意味がある。これは、米国内での歴史的に重要な外交政策上の対立なのである。米国の外交エスタブリッシュメント層の多くは、政府の内外を問わず、リベラルな国際主義者および大西洋主義者(Atlanticist=西欧と北米の協調を重視する人々)だ。彼らは、米国の最も重要な役目はリベラル主義に基づく世界秩序の構築であり、米国の最も重要な同盟相手はわれわれの信念を共有する北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)諸国だと信じている。彼らは、こうした取り組みに対する最大の敵はロシアであり、従って米国にとっての最大の敵もロシアだと考えている。ロシア政府が欧州と米国の国内政策に介入しようとする試みは、EUの団結と、西側世界が支持するリベラルな民主主義の原則への脅威とみなされる。ロシアによるウクライナ侵攻とクリミア併合は、リベラルな秩序と、汎(はん)大西洋世界への直接的な攻撃とみなされる。