これはそう遠くない未来の話である――。米国家安全保障会議(NSC)は近く、緊急会議を開く。北朝鮮は、グアムの米軍基地を射程圏内に収める核弾頭を搭載したミサイルを発射した。このペースで行けば、1年もたたないうちに米本土に核ミサイルが撃ち込まれる可能性がある。
厳しい貿易制裁にもかかわらず、北朝鮮が核能力を進化させていることはショッキングだが、この背景には北朝鮮に流れ込む米国や同盟諸国が監視できない資金の存在がある。暗号資産(仮想通貨)だ。といっても、にわか長者を生み出し、堅実な投資家は概して避けているようなハイリスクなものではない。正当な裏付けのある新たな暗号資産、すなわちデジタル人民元だ――。
上記は架空のシナリオだが、幻想ではない。中国が計画通りデジタル通貨を導入し、北朝鮮がそれをミサイルの開発資金の調達に使用すれば、米国の制裁をかいくぐって資金が流れることになる。そうなれば米国はもはや時代遅れとなった自国通貨を何とかしなくてはならないだろう。米国は中国に倣い、世界経済の支配を維持するためにドルをデジタル化すれば、強力な監視ツールを手に入れることにもなる。
最初に普及した暗号資産であるビットコインは取引で匿名性を保つために作られたが、未来のデジタル通貨は匿名性とはほど遠いものになるだろう。
デジタル人民元を使用したあらゆる取引を中国政府が追跡可能なように、デジタルドルの取引も全て発行元である米国政府に筒抜けになる。銀行は引き続き資金の流れを管理するかもしれないが、これまでのように記録を保持する役割はなくなる。