●資金をダブつかせた結果、株価が伸び悩み
ウォーレン・バフェット氏のバークシャー・ハザウェイ(BRK.A)の株価は、S&P500指数との相対パフォーマンスにおいて、同氏がかじ取りをしてきた54年間の中で最悪の部類に入る年を迎えている。IT関連製品の卸売りを手掛けるテック・データ(TECD)の先日の買収失敗は、こうした問題の大半がこの著名な投資家の資本配分に関する頑固なアプローチにあることを示している。8月に89歳を迎えたバフェット氏は、買収額500億ドル以上となるような巨大買収の機会を探しているが、まだ成功していない。バークシャーは、ターゲットとしてははるかに小さなテック・データに対し1株当たり140ドルで買収を提案したが、1株当たり145ドル(総額51億ドル)を提案したプライベート・エクイティ・ファンドのアポロ・グローバル・マネジメント(APO)に競り負けてしまった。
バフェット氏はバランスシートに現金をため過ぎており、第3四半期末の残高は1280億ドルに達し、過去最大となっている。バークシャーは少額の自社株買いしか実施しておらず、配当の支払いは拒んでいる。こうした全てのことが投資家を失望させ、バークシャーのクラスA株の株価は2019年に入ってからは9%しか上昇しておらず、約33万4000ドルにとどまっている。これに対しS&P500指数の同期間のトータルリターンは28%である。
●買収価格へのこだわりと株主還元への消極姿勢が資金余剰の原因
バフェット氏は価格に敏感であり、また価格で競り合うのが嫌いなため、適切な買収ターゲットを見つけることができていない。同氏の考え方は、バークシャーは被買収企業にほぼ自律的な経営をさせることに前向きであり企業にとって非常に魅力的な株主なのだから、買収で他の買い手と競争する必要はないというものだ。テック・データのケースではそのルールを曲げたようだが、それでも獲物は捕まえ損なった。しかし、企業の取締役会は企業文化のような問題よりも買収価格の多寡だけを重視する傾向にあるため、バークシャーが自社の言い値で買収を実現するのは困難である。
バークシャーの昔からのある株主は、バフェット氏はその規模や資金力を強みとして生かせるように、もっと規模が大きな企業をターゲットにすべきだと語る。本誌は、プライベート・エクイティ・ファンドのKKR(KKR)から既に買収について打診を受けているドラッグストアチェーン大手のウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA)であれば、株価収益率(PER)が10倍とバリュエーションも低く適切ではないかと提案したことがある。同社の時価総額は520億ドルだ。他に考えられるターゲットとしては、デルタ航空(DAL)、あるいはサウスウエスト航空(LUV)がある。両社の時価総額は現在それぞれ360億ドルと300億ドルとなっている。航空会社はバフェット氏の好みに合っているし、バークシャーは両航空会社の約10%の株を保有している。