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「早期に返済を始めたい」。あおぞら銀行のブライアン・プリンス社長が、決算発表の記者会見で公的資金返済への強い意欲を示してから2カ月余り。しかし、一つの区切りだった6月の株主総会では返済に必要な決議を見送り、今なお具体的な手続きに入ったという話が聞こえてこない。
優先株というかたちで投入された2000億円を超える公的資金が返ってくるとなれば、財源不足に頭を悩ます政府としても歓迎すべき話だが、なぜ手続きが進まないのか。理由の一つは返済原資が十分でないためだ。
あおぞら銀が返済するべきとして、政府が求めている公的資金の残高は2276億円。一方で、あおぞら銀が返済原資として持っている剰余金は、3月末時点で1543億円しかない。現在の残高には大きく届かず、返済期限として10月3日に普通株に一斉転換される分の1553億円にも届かない。
1553億円の優先株が普通株に転換されれば、国が発行株式の19%を保有する大株主になる。経営に対する金融当局の影響力が高まるだけでなく、保有株数を考えれば、現在180円前後の株価が500円近くまで上昇しなければ返済金額に届かなくなる。
あおぞら銀は、そうした事態を避けようと資本剰余金の一部を取り崩し、返済原資を捻出することも検討した。だが、「最終的な返済スケジュールが見えない状況で、小手先での一部返済は認められない」と当局に一蹴された。
普通株への転換で完済時期がさらに遠のくことはあおぞら銀、政府双方にとって好ましくない。にもかかわらず当局が返済に難色を示しているのは、公的資金を少しでも減らして「売却交渉といった出口を早く見つけたいという経営陣の思惑を見透かしている」(当局の関係者)からだ。