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東北地方のナンバーワン地方銀行である七十七銀行が12月8日、ついに金融機能強化法の震災特例に基づく公的資金の活用を決めた。被災地の金融機関としては仙台銀行、筑波銀行に続いて3行目。200億円を劣後ローンで受け入れることで自己資本比率12%を確保し、国と一体となって地域復興に最大限の支援を行うとしている。
しかし業界内からは、そもそも「200億円ぽっち、七十七銀行には必要ない」との声が聞こえてくる。
それもそのはず。確かに2010年度は震災により、貸倒引当金等を550億円積み増すなどして戦後初の306億円の最終赤字に転落した。それでも、自己資本比率は11年9月末で11.36%と、国内基準の4%を大きく上回っているのだ。中核的な自己資本の比率であるTier1比率も同10.77%と、大手行と比べても遜色ない。
しかも11年度は通期の最終利益を105億円と見通しているし、純資産も約3000億円を誇るなど、同行にとって公的資金の必要性はない。むしろ、金融庁から箸の上げ下ろしまで指示されるなど、自由が制限されるかもしれないリスクを冒してまで受け入れたくはなかったというのが本心だといえる。
ではなぜ今回、受け入れることになったのか。その裏には金融庁の強い要望が見え隠れする。
一つは、念には念を入れて自己資本を厚く備えさせることにより、「地域復興のため、東北のリーダーバンクとしてリスクマネーを出させたい」(金融関係者)思いがあるのだという。
規模こそ大きいものの、「殿様体質で保守的。自らリスクを取りに行かない」(地元金融関係者)と評される七十七銀行に、変化を促す狙いだ。
さらに「これをきっかけとし、本来、七十七銀行よりよっぽど危ない他の東北の金融機関にも公的資金の受け入れを決めてほしい腹がある」(銀行関係者)。
公的資金を注入した金融機関には、資本不足で危機的状況にある、といったイメージがどうしてもつきまとう。それが、東北ナンバーワン地銀ですら入れたとなれば、他が追随したとしても、過度の信用不安を起こさずして復興への体制を整えられる。
ただし、原発問題がくすぶる福島県の3地銀は、いまだ検討の意思すら示していないのが現状。震災特例では経営責任を問われないとはいえ、過去の金融庁との経緯からすると、「そうもいかないのではないか」との懸念が銀行経営陣の頭をよぎり、及び腰になるのもまた事実といえよう。
「七十七銀行の決断を見てほかがなにもしないというのは、もはや許されない」(金融庁幹部)との思惑どおりに事が進むかどうかは微妙といえる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)