【バロンズ】米ハイテク規制が始動、混乱は必至Photo:Reuters

労働者を請負業者に分類する基準を厳格化する法律が施行、ギグエコノミーを直撃

 プライバシー保護支持者、有識者、政治家のいずれもがハイテク規制の強化を声高に叫んでいる。論点は多種多様だが、変化は既に起きようとしている。

 2020年1月1日、カリフォルニア州で、力を増すハイテク企業が招いている最も厄介な問題の幾つかに対処することを目的に、二つの法律が施行される。これらの新法は同時に、同州で事業を展開するあらゆる企業に頭痛の種、面倒、コスト、そして複雑な事態をもたらすだろう。

 まずはカリフォルニア州下院法案5号(AB5)から見てみよう。AB5は、ライドシェアリングのウーバー・テクノロジーズ<UBER>やリフト<LYFT>、フードデリバリーのドアダッシュやポストメイツといった企業の活動領域で働くギグエコノミーワーカー(インターネットを通じて単発の仕事を請け負う働き手)の労働条件の改善に焦点を当てており、労働者を請負業者に分類するためのルールを規定したカリフォルニア州最高裁判所の2018年の判決を法制化するものだ。この判決における最も厳しいルールは、「請負業者は雇用側企業の通常業務以外の業務に従事する者でなければならない」という規定だ。同法の対象となるのは主に運転手や配達人などの請負業者だが、ゴルフのキャディーやフリーランスのジャーナリストらにも適用される。

 AB5の下では、請負業者に該当せず、従業員に該当すると分類された労働者は米国労働法によって保護される。雇用主は社会保険料、給与税、失業保険料、州の雇用税を支払い、さらに労働者補償保険を提供し、最低賃金法を順守しなければならなくなる。ウーバーとリフトは先週、新法をどの程度適用するつもりなのかという筆者の質問に回答しなかった。ウーバーは従来から、手掛けているのは輸送事業ではなくハイテク事業であるためAB5は適用されないと主張している。この見解が法廷で試されることになるのは確実だ。

 ウーバーとリフトはいずれも、証券取引委員会(SEC)への届出書でAB5をリスク要因に加えている。ウーバーは、「運転手を従業員に分類することが要求された場合、当社の現在の財務諸表の提示内容に影響を与える可能性がある」と警告している。

 両社は、同法により、運転手を特定の労働時間帯に割り当て、運転手からフレキシブルな労働スケジュールを奪うことを余儀なくされると主張する。ギグエコノミーの企業は同法の修正について既にカリフォルニア州知事のニューサム氏などと話し合っている。また、AB5を廃止する提案投票を2020年11月に行う準備を整えている。