『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』で
快適な社会の裏側を知る

『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した -潜入・最低賃金労働の現場』
『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した -潜入・最低賃金労働の現場』 ジェームズ・ブラッドワース著 濱野 大道訳  光文社 1800円(税別)

 スマホの画面をタップするだけで翌日には商品が届く便利な時代になった。だがその便利さの裏側で何が起こっているのか。イギリス人ジャーナリストが、現代の快適さを支える多くの「非人間的な」仕事について明らかにしている。

『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』(光文社)はイギリスの「低賃金労働」の実態に迫った潜入ルポ。著者みずからがアマゾンの倉庫作業員、訪問介護士、コールセンターのテレフォンアポインター、ウーバーの契約ドライバーに実際に従事し、リアルな現場を伝えたものだ。

 アマゾンの倉庫(配送センター)では棚から商品を集めて箱に入れる「ピッカー」を担当。勤務中は常に動きが追跡されており、ピッキングの速さで従業員同士がランク付けされたり、スピードが落ちていると警告文が送られてきたりする。広大な倉庫で1日10時間半働くと足が1.5倍に腫れ上がる。給料は最低賃金ぎりぎりの時給7ポンド(本書刊行時)。

 著者を含む労働者たちはとても人間扱いされているとは言えないが、アマゾンは従業員を全員「アソシエイト」と呼んでいるのだという。そしてアマゾン会長であるジェフ・ベゾスも同じく「アソシエイト」であり対等なのだそうだ。

 人間が極限まで効率的に働かされている実態と、巨大テクノロジー企業のいかにも人間的なメッセージ。そのギャップが恐ろしく不気味でもある。本書で便利さ・快適さの裏側を考えてみたい。