東北復興支援を目的に作られたキャラクター「東北ずん子」は、来年でプロジェクト開始から10年になる。東北地方に本社を登記する企業であれば、手続きをせずに無償で商用利用できる“利用料無料”のキャラクターとして、これまで多くの企業とタイアップをしてきた。無償にもかかわらず、長きにわたり活動できるのは一体なぜなのか。無償キャラクタービジネスのからくりを、運営会社に聞いた。(清談社 中村未来)
「東北の企業は無償で利用」
儲けは一体どこから?
一般的に、既存のキャラクターを商用利用する際には、運営会社に申請して契約締結、そして商品の監修と、経るべき行程がいくつかある。これらの手順をすべて終えるまでに数カ月以上かかるのはザラ。さらに使用時にかかるライセンスフィーを考えると、企業はキャラクター利用に対して慎重にならざるを得ない。
こうしたキャラクターの商用利用に関する煩わしさを取っ払ったのが、「東北ずん子」だ。萌え絵風の美少女キャラクターであるずん子は、東北の企業であれば、申請、契約、監修が不要で、自由に商用利用することができる。ライセンスフィーも無料だ。
「公式HPの素材データには、ずん子のイラスト、3Dデータが大量にストックされているので、それらを使って広告や、動画などを作ることができます。商品の利益についても、マージンはいただいていません。個人クリエイターも非商用であれば、同じように無料で使うことができます」
そう語るのは、運営元であるSSS合同会社の小田恭央CEO。同社が設立されたのが2011年1月。当初は東北とは別の地域のキャラクタービジネスを考えていたが、その最中に東日本大震災が発生した。直ちにプロジェクトを東北支援に切り替え、誕生したのが東北ずん子だ。
「キャラクターの二次使用に関する煩雑な仕組みを、最大限簡略化することで、東北企業の活性化につながればと考えました」(小田氏、以下同)
ただし、無償・申請なしで使えるのは東北の企業と、非商用で利用する個人クリエイターのみ。東北以外の企業が使用する場合は、タイアップ料や、ライセンス費用がかかる。
「東京の企業とのタイアップ料が、弊社の売り上げの主軸になっています。たとえば、ソーシャルゲームとタイアップし、そこでの売り上げが上がれば、キャラクターを使う際のMG(最低保証額)に加え、ライセンスフィーが入ってくるという仕組みです。なお、本社を東北に置いているので、会社に利益が出るほど、税金が東北にいくようになっています」
無償枠で利用されるほど、キャラクターのファンは増える。キャラクターの認知度が高まれば、必然的に他地域の企業からタイアップの声がかかり、会社の売り上げにつながる…というのが、東北ずん子のビジネスモデルだ。