ユニクロ店舗内のセルフレジに対し、ファーストリテイリングが下請け企業から特許侵害で訴えられている。一体何が起こったのか。下請け企業の社長が、その特許侵害を告発するまでのやりとりを、生々しく語った。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
「ゼロ円でライセンス提供を」と要求
ユニクロのセルフレジが特許を侵害?
「9カ月も話し合ってきて、最後に『ゼロ円でライセンス提供してください』と言われた。それはないだろうと、私の腹は決まりました」
こう話すのは、ファーストリテイリングのセルフレジを特許侵害で訴えている大阪市のIT関連企業、アスタリスクの鈴木規之社長だ。
鈴木氏は東レ出身で、独立して同社を設立した。iPhoneなどに装着して利用するスマートフォンケース型のRFID(電子タグ)リーダーなど、IoT製品を販売しており、トヨタ自動車や東急ハンズなどでも同社の製品が採用されている。
アスタリスクは2019年9月24日、ファストリを相手取り、特許権侵害行為差し止めの仮処分を求めて東京地裁に申し立てた。これは、ファストリがユニクロ店舗内で急速に台数を増やしているセルフレジが、特許を侵害しているという訴訟である。
ユニクロのセルフレジは、商品についたRFIDタグを読み取り、レジに商品を置くだけで会計できるという装置だ。ファストリが推進している生産、物流、店舗までRFIDを活用する「有明プロジェクト」の一環として、強力に進めている施策でもある。
今回の訴訟はそのレジがターゲットとなった。争点となる特許はアスタリスクが17年5月に出願し、19年1月25日に登録された特許6469758号「読取装置及び情報提供システム」である(特許は出願した日から20年間権利が発生する)。