のぞみ12本ダイヤが
実現できた背景

 複線の東海道新幹線は、駅以外で先行列車を追い越すことができない。つまり、いくら「のぞみ」を速くしても、「こだま」に追いついてしまったらお手上げだ。そこで「こだま」を高速化することで、次の駅まで「のぞみ」から逃げ切ろうという寸法だ。特に、唯一追い越し設備がない熱海駅が東海道新幹線のダイヤ上のネックとなっており、「こだま」が小田原から三島までどれだけ速く走れるかが、「のぞみ」の運行本数を左右するのである。

 今回のダイヤ改正でも、1999年にデビューした「700系」車両が東海道新幹線から引退し、2007年から導入されている「N700系」に統一される世代交代が行われる。これが「のぞみ12本ダイヤ」のキモである。

 ただし東海道新幹線区間の最高速度は「700系」の時速270キロに対して、「N700系」は時速285キロ。2003年の世代交代とは異なり、わずかな差のように見えるし、東北新幹線の「E5系」が最高速度時速320キロで走行していることを思うと、少々物足りない数字のようにも見える。しかしこれには理由がある。日本最初の新幹線である東海道新幹線には、その後に造られた路線よりも急なカーブが存在するため、これ以上、見かけ上の最高速度をアップしても費用対効果が悪いのだ。

 そこで「N700系」は名より実を取って、最高速度以外で時間短縮の徹底を目指した。ひとつは、カーブ走行時に車体をわずかに傾斜させ、乗客の不快感の原因となる遠心力を打ち消す装置の導入で、これにより従来よりも高速でカーブを走り抜けることが可能になった。さらに「700系」よりも加速度を向上させ、最高速度に到達するまでの時間も短縮。これらの技術の採用で、今まで以上に「こだま」の逃げ足が速くなり、より多くの「のぞみ」に道を譲れるようになったというわけだ。

 加えて信号装置など地上設備の改良や、乗務員、駅係員、清掃員のオペレーション改善を積み上げることで、「のぞみ12本ダイヤ」が実現したのである。

 今度「こだま」を利用する際は、駅到着後、ほんのわずかな時間で後続の「のぞみ」が追い抜いていくことに注目してほしい。通勤電車以上に通勤電車らしい高速鉄道、これこそが東海道新幹線の最大の魅力である。

【お詫びと訂正】 記事初出時、1ページ目の1段落目、「『こだま』のみが停車する熱海駅」とありましたが、熱海駅には1日数本、ひかり号が停車します。お詫びして訂正いたします(2020年1月20日 14:50 ダイヤモンド編集部)