高級ブランドが米国で成功するのは難しい。だがそれを試みることが以前にも増して重要になっている。高級ブランドにとって、米国市場は難所だ。ワールド・ウエルス・レポート2019によると、530万人の富裕層が暮らす国であるにもかかわらず、高級なハンドバッグや衣料品にカネを使わせるのは容易ではない。同レポートは富裕層について、投資可能な資産を100万ドル(約1億1000万円)以上保有している世帯と定義している。一方、富裕層の人口が米国の4分の1程度にもかかわらず、ベインの予測によると、今年の高級品業界の売上高で伸びた分の90%を占めるのが中国人だ。ブランド品に対する米国人の支出額が比較的少ないことを、拡大の余地とみるブランドもある。フランスの高級品大手モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)は宝飾品のティファニーを買収したことで、米消費者との接触が増えることになる。またLVMHは、テキサス州に工場を新設した。この工場で製造されるハンドバッグには「メード・イン・USA」と刻印されることになる。そのため都合のいいことに、フランス製のハンドバッグに課される100%の関税を回避できるというおまけがつく。この対仏関税はドナルド・トランプ大統領が今月、フランスによるデジタル課税への対応策として発表したものだ。