カラー設立前に取締役は辞任
2007年には一般社員としても退職

 ガイナックスを離れるにあたっては、筋を通すためにカラー設立の前に取締役を辞任しました。山賀社長(当時)から「縁は残したいから社員としては残ってほしい」と言われ、その時は一般社員として名前だけ残しましたが、2007年には残っている意味もなくなり一般社員としても退職しています。

新世紀エヴァンゲリオン
©カラー/Project Eva.

 僕がガイナックス以外で『エヴァンゲリオン』を作ることは、「エヴァは庵野のものだから」と、即座に認められました。『エヴァンゲリオン』の原作者が僕であることも明確にし、商品化ロイヤリティーの収益配分を受けられることも話し合いで決めています。

『エヴァ』の版権管理と商品化窓口はそのままガイナックスに残しました。

 当時のカラーでは人手不足でしたし、当時のガイナックスの版権担当者は作品のことを良くわかってくれていました。ガイナックスにも相応なロイヤリティー配分と手数料が入るので、お互いウィンウィンで良いだろうと考えてのことです。

 その後、カラーは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズを自社出資で製作・配給していきます。2作目を制作中の2008年頃から会社間の関係も変化してきました。ガイナックス社内の方針転換などもあり、ガイナックスへの『エヴァ』からの収益配分の割合は減っていきました。それでも『エヴァ』によるお金は窓口であるガイナックスに入り続けていました。

 ところが、2012年からカラーへのロイヤリティー支払いが滞りはじめ、分割払いの相談がありました。ガイナックスの経営がまたしても悪化していたのです。山賀社長(当時)と武田(康廣)取締役が直接来社し、その提案を受け入れました。

 ちなみに、カラーへのロイヤリティーの支払いは、僕が中心となって制作した『エヴァ』に関するものだけです。監督をした『トップをねらえ!』や『ふしぎの海のナディア』では印税も配分も認められておらず、ガイナックス以外の制作会社で監督した『ラブ&ポップ』のロイヤリティーは、今でもガイナックスに入っています。

 そして2014年になると、さらに融資を頼まれました。

「もうつぶれるしかない」とまで言われ
大急ぎで1億円を用立てた

 まだ大きな金額が返済されていない状態なのに、武田さんから「あと3日のうちに1億円貸してくれ」といきなり懇願されたのです。そのお金がないと「もうつぶれるしかない」とまで言われたので、大急ぎで1億円を用立てました。

 そんな経営状態の会社に『エヴァ』の権利をいつまでも預けておくことに危険を感じて、ガイナックスにあずけていた『エヴァンゲリオン』の商品化窓口やロイヤリティーの分配の業務の移譲を1年前倒しにすることを条件としました。

 もともと段階的にカラーに戻すことになっていたのですが、ガイナックス側の希望で先送りにしていた案件です。その条件以外は、計画通り返済されれば無利子・無担保での融資としました。