「損得分岐点レート」という考え方
前ページで一例を示した「損得分岐点レート」は、11年目以降の適用金利の平均が何%になれば、全期間固定金利型と「10年固定」の返済総額が同じになるか、という金利水準です。
著書『いますぐに、住宅ローンを借り換えしなさい!』では、返済期間や金利水準ごとに、この損得分岐点レートを一覧表で掲載してありますので、ぜひご参考にしていただければと考えます。
ただし、実は、この返済総額で比べる方法にも問題があります。
理由は、「現在」の金額と、何十年かあとの「将来」の金額の「価値」は、物価などの影響で異なるからです。
それを「延べいくら」という金額(この場合はトータルの返済負担)で比較するのは、正確な判断とは言えないというのが筆者の見解です。
極端に言うと、10年後は激しいインフレが起こっていて、物価が現在の2倍になっていたとしたら、その時点の住宅ローンの残高という「借金」や、ローンの返済額の価値は半分に低下しています。したがって、金利が恐ろしいほど上がっていても、このほうが負担はラクになっていることもあるでしょう。
そのため、この「延べいくら」という返済総額で比較するという方法は、できれば避けたいのですが、残念ながら将来の物価は想定できないため、住宅ローンの場合はほかに方法がないのです。
ただ、物価水準が変わらなければ、この方法でまったく問題はありませんし、こういうことを言い出すと、たとえば「25年返済と35年返済を比べた場合は、後者のほうが返済総額が多いから不利だ」といった話の信頼性にも疑念が生じてしまいます。
なにより、将来はインフレが来るだろう、といったような感覚的な判断ではなく、「数字」で損得が比較できるのは、この「損得分岐点レート」以外にありません。
以上の点から、判断する際の大切な目安として、ご参考になればと考えています。
ただし、この「損得分岐点レート」で算出された金利を、そのままで判断してはいけません。この数字をもとに、「金利上昇余力」を計算して判断することが大切です。