ゆうちょ銀行の住宅ローン事業への本格参入が現実味を増してきている。
これまで、スルガ銀行の住宅ローンを代理販売していたが、自前のローンは販売していなかった。しかし、今年4月の改正郵政民営化法成立を受けて本格参入の議論が活発化。下地幹郎・国民新党幹事長は、10月1日からのスタートを目指し、具体的な案を7月上旬にも政府およびゆうちょ銀に提示するとの考えを語った。
ただ、検討されている具体案は何ともチャレンジングだ。民間金融機関を補完するとして年収400万円以下の人への融資を一つの基準とし、50年にわたる超長期ローンも請け負うとしているのだ。住宅購入を促進できれば経済にも貢献できるというわけである。
しかし、民間が手を出さないということは、それだけ貸し倒れのリスクが高い案件だということ。一歩間違えれば「(日本版)サブプライムローン問題を起こしかねない」(地方銀行関係者)。
肝は、いかに精緻な審査ができるかにある。が、ゆうちょ銀にそのノウハウはなきに等しい。外部機関への委託も考えられるが、前例がない幅広い融資を考えるなら、やはり越えるべき壁は高いだろう。
もっとも、本格参入の是非は郵政民営化委員会で決められるのだが、委員会は「新委員長(西室泰三・東芝相談役)になってからむしろ案を早く上げてこいというくらい積極的」(地銀関係者)という。
貯金のほとんどを国債で運用するゆうちょ銀とすれば、「運用先の拡大は喫緊の課題」(下地幹事長)でもある。結局、最後は「民間と競合させてくるのではないか」(地銀関係者)との懸念は根強い。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)