住宅ローンの金利タイプは、
さまざまな試算数値を見てから選ぶべき

 なにかを比べるときに、どちらが得なのかは、結局のところ「結果論」となってしまいます。しかし、比較する対象が数値化されていれば、損得は結果論だとしても、「損得の分岐点」となる数字というのは、多くのケースで計算できるものです。

  たとえば、公的年金(老齢基礎年金)を本来の65歳からではなく、60歳からもらう場合、年金額が3割カットされますので、長生きしたらソンだといわれますが、このアドバイスでは結局のところ早くもらっていいかどうかはわからないでしょう。
  でも、この場合も損得の分岐点は計算でき、繰り上げ受給を請求してから200ヵ月(16年8ヵ月)となるのです。

 いくつかの注意点がありますので、この数字だけで決めてはいけませんが、たとえば60歳で年金の繰り上げ受給を始めた人は、16年8ヵ月を足した「76歳8ヵ月」で損得が一致します。したがって、あくまでも今後の年金の支給水準が変わらない場合の話ですが、これくらいは長生きするだろうと思うなら、60歳からもらうのはやめたほうがよいという判断ができるでしょう。

  作為的な場合は除きますが、数字自体はうそをつきません。あとは、その数字からどのような判断を行い、行動するか…、これによって将来の状況が変わってきます。
  したがって、感覚ではなく数字で明確な分岐点が確認できれば、それを知らないときよりも適切な判断が下せるものと考えます。

  著書『いますぐに、住宅ローンを借り換えしなさい!』が、他の住宅ローンの本と最も異なる点は、これらの数値や損得の分岐点をいろいろな角度でご紹介している点でしょう。
  現在の金利水準なら全期間の固定金利型がよいとか、金利は当分上がらないはずだから変動金利でよいだろう、といったような感覚的な判断(主張)を述べるのではなく、とにかく多くの試算数値を見ていただき、それをもとにご自身で判断していただくことを主眼としています。

 ちなみに、今回ご紹介したケースでは、11年目以降の変動金利型の基準金利の平均で「4.869%」(=現在よりも、短期金利が2.4%ほど上昇)が損得の分岐点となったわけですが、11年目以降はこれくらい金利が上がっていると思うのであれば全期間固定金利型を選べばよいでしょうし、そこまで上がらない、あるいは上がったとしてもダメージは少ないと考えなら「10年固定」を選ぶ、という判断になるでしょう。

 変動金利型の金利上昇リスクなどについては、次回お伝えしますが、一般的な変動金利型の基準金利で「4.869%」という水準は、平成6年9月に実施された住宅ローン金利の自由化以前の時期である平成5年8月にまで遡るということを、とりあえず今回は記しておきます。


【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】

「10年固定」と「全期間固定金利型」、<br />どちらで借り換えるべきか?定価:1,575円(税込) A5判・並製・256頁 ISBN978-4-478-022238

◆浅井秀一『いますぐに、住宅ローンを借り換えしなさい!』
「ゆとり返済」の危険性に最も早く警鐘を鳴らし、かつての「繰り上げ返済・借り換えブーム」の仕掛け人となった、ファイナンシャル・プランナー・浅井秀一が、緊急出版。住宅ローン金利が史上最低水準になったいま、「最大の借り換えチャンス」ともいうべき状況がやってきていると著者は主張します。諸費用をほぼすべて含めて借り換えしても、固定金利どうしの場合、いま返済している住宅ローンより実質金利が「0.3%程度」以上低ければ、大きな借り換え効果が確定するでしょう。住宅ローンを借りているすべての方に読んでいただきたい一冊です。

 ご購入はこちらから