旅行者には台湾人もおり、「大陸が手配したバスに乗るかどうか」の苦しい選択を迫られていた。その追い詰められた感情が「台湾駐日事務所は何をやっているのか」という言葉となり、SNS上で拡散され、果ては台湾メディアを巻き込んだ一大バッシングにつながった。しかしNHKの取材によれば、事実は関西空港が手配したバスであり、中国大使館によるものではなかった。

 フェイクニュースや情報操作もシャープパワーの一種であり、上述の一連の騒動も、「台湾の民主主義を守る」とかたくなな蔡英文政権への圧力と解釈することができる。

 一方、2020年1月の総統選を控えた昨年末、中国の影響が全面的に社会に浸透していると懸念が強まる中、台湾で「反浸透法」が成立した。「域外の敵対勢力」による献金やロビー活動、フェイクニュースの拡散などを行った場合、5年以下の懲役とするものだ。

オーストラリアで香港デモの“場外乱闘”

 オーストラリアでも2018年、「反スパイ法及び外国干渉防止法」「外国影響力透明化法案」など、台湾の「反浸透法」と同様の法案を通過させている。オーストラリアもシャープパワーの圧力を受ける典型的な国家だ。

 オーストラリア情勢に詳しい消息筋によると、「オーストラリアでは中国共産党中央統一戦線工作部、中国人民政治協商会議、中国平和統一促進会の意を受けた形で、中国系コミュニティーを通じた世論操作や政治介入が幅広く展開されるようになってきた」という。2019年2月に起きた中国人実業家の政治献金発覚と永住権剥奪、同年3月に起きた中国系実業家の殺害事件は、中国政府の工作と無関係ではないといわれている。

 オーストラリアは、約2340万人(2016年国勢調査)の人口のうち、先祖を中国に持つと回答する中国系豪州人は121万3903人で、人口の5%以上を占める。大陸から来た移民者や留学生などの中国人人口は過去10年で倍近く増えているが、その大学内でも頻繁に「工作」が行われている。

 2019年、オーストラリアのキャンパスは、「逃亡犯条例」改正案に反対する香港デモの“場外乱闘”の場と化した。同年7月24日、オーストラリアのクイーンズランド大学に通う香港人留学生が集会を開いたところ、乱入した大勢の中国人留学生との間で殴り合いになる騒ぎに発展した。だが、これは自然発生的な動きではない。「共産党統一戦線工作部などの中国の組織が、在外の大使館を経由して大学生や若者に活動させるのは常とう手段となっている」(前出の消息筋)という。