今回の事件では、ゴーン被告は実際に受け取った報酬ではなく、退任後に受け取る予定の報酬を記載していなかったとして立件された。

 東京地検特捜部と合同で捜査したSECは告発に際し「業績と報酬額が見合っているか、取締役会が機能しているか、報酬の開示情報から知ることができる」と投資家保護の観点から、虚偽記載は悪質な犯罪行為と強調した。

 内閣府令の記載例も年度ごとに「受け取る見込みの額が明らかになった分」も有報に記載を求めている。そのため特捜部とSECは退任後の報酬を記載していないのは違法と判断したとされる。

 しかし、ゴーン被告側は「引当金もなく未確定」と主張。共犯として起訴された元代表取締役も「金融庁や弁護士に相談し、記載の必要はないと回答を得ていた」と供述していた。

 こうした背景から、会計士は「再逮捕、追起訴した特別背任が(隠し玉に)あるから、完全無罪にはならないだろう、と踏み切ったのかもしれないが…」と想像した。

 とはいえ、特別背任も実は立証が難しいというのが一般的な見方だ。「自己や第三者の利益を図る目的」「任務に背く行為」「会社に対する財産上の損害を与える意図」などの要件を満たす必要があるためだ。

 しかも、今回は海外が舞台であり、時間も経過しているため、関係者の証言を得るのも困難との声も聞かれていた。検察側にも「完璧な証拠、法的論理構成」がそろっていたとみるのは難しい。

 声明で「やっとメディアと自由にコミュニケーションを取れるようになった」とも訴えていたゴーン被告は日本時間8日夜、記者会見を開く予定だ。

 何を語るか注目されるが、「負け犬の遠吠(ぼ)え」に、もはや説得力は微塵(みじん)もないだろう。