従来の「ひきこもり支援」施策が失敗続きだったのは、こうした親の意向を鵜呑みにし、本人の意思を無視して外に出し、意識が変わるまで自己分析を迫る洗脳的手法など、トレーニングの対象にしてきた支援者が多かったことにある。親には「事件になるぞ」と脅したり、本人を嘘で騙したりして外に連れ出すことが目的の“引き出し屋”と呼ばれるビジネスも、その延長戦上にある。

「働きかけるタイミングとか、あると思うんですが…」

 実践論の答えを求めて、そう食い下がる支援者に、登壇者の1人で精神科医の斎藤環氏は遮るように、こう言い返した。

「“やりたい放題やってるじゃないか”と親が思ってるということ自体、子どもと対話ができていない。親が対話をしていれば、子が苦しくてゲームしていることも理解できるはず。言えるのは、対話をしてくださいということだけです」

水面下で生きる当事者たちの声に
どう耳を澄ませるか

「ひきこもり支援」における支援のトレンドは、最近、間違いなく変わってきた。

 支援者が「引きこもることのできない家庭にしましょう!」などと親に呼びかけたら、社会に本人の思いを受け止める受け皿がまったくない中で、命のリスクにもつながる。親のニーズがどんなにあっても、本人の意向を無視したやり方は、“成果”が出ないし、見合わない。

 引きこもる背景や苦しみは、精神疾患や発達障害といった一面ではなく、見過ごされてきた多様性がある。その見えなかった多様さは、当事者たち自身が声を出して発信し始めたことにより、生み出されたうねりだ。支援者に求められているのは、こうして見えにくい水面下で生きている当事者たちの声に、どう耳を澄ませるのかではないのか。

 引きこもり支援歴40年以上で、いわば引きこもり支援のレジェンドともいえる、一般社団法人「OSDよりそいネットワーク」共同代表で、一般社団法人「SCSカウンセリング研究所」代表の池田佳世さんは、「介入すべきは親に対して」だとして、親の学習会に力を入れてきた。