米中貿易交渉の第1段階の合意を目指した協議は、感謝祭の11月28日前後に行き詰まった。出来上がりかけた合意が再び崩壊し、ほぼ2年前から続いてきた貿易戦争が終結するという希望も失われるとの懸念が浮上してきた。
状況を知る人々によると、中国の崔天凱(さい・てんがい)駐米大使は、ドナルド・トランプ米大統領への直接的な対話ルートを見いだそうと考え、トランプ氏の義理の息子で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏と会談した。崔氏はクシュナー氏に対し、米側の提案では、関税の撤回の程度が十分ではないと伝えた。
これに対しクシュナー氏は、合意すべき時期が来ていると応じた。ここで合意しなければ、大統領は12月15日に、スマートフォンやおもちゃなど1560億ドル(約17兆1500億円)相当の中国からの輸入に新たな関税を課す意向だった。クシュナー氏は「関税引き下げという側面から考えるべきではない。合意が達成されない場合に何が起きるのかという側面から考えるべきだ」と忠告した。
こうした展開をよく知る人物らによると、トランプ氏を気まぐれな人物と考えていた中国側の交渉担当者らは、クシュナー氏の言葉から少なくとも確実性を感じ取った。彼らは好機だとも感じていた。この合意が、米政府が以前から強く求めていたような中国の経済政策変更を強いるものではなかったからだ。
約2週間後、米中双方は、この妥協による合意が1月15日にホワイトハウスで開く式典で調印されると発表した。トランプ政権で中国問題を扱った経験を持つクリート・ウィレムス元通商担当顧問は「今回の合意は協力して問題を解決しようとする試みだ」と指摘する一方で、「米国が当初目指していたものがすべて達成されたわけではない」と語った。
交渉内容を知る中国政府の規制担当者は「この合意が、米中関係のさらなる悪化を防ぐ一助となることを期待している」と述べた。