カルロス・ゴーン
ゴーン被告逃亡をめぐる報道を見ていて感じたのは、日本中が緩み切っているのではないかということだ Photo:Anadolu Agency/gettyimages

ゴーン被告に戦略負けした
日本の関係者たち

 年末年始は通常あまり大きなニュースがなくて静かなのですが、今年はIR絡みでの国会議員の逮捕、ゴーン被告の海外逃亡、米国によるイランの司令官殺害と大きな事件が相次ぎました。

 それらの事件についての報道、特にゴーン被告の逃亡をめぐる報道を見ていて感じたのは、日本中が緩み切っているのではないかということです。特に新聞、テレビといったマスメディアは、緩み切ってしまっているのではないでしょうか。

 ゴーン被告の海外逃亡を巡る関係者の対応を見ていると、緩んでしまった日本の状況がよくわかります。ゴーン被告は昨年12月29日に日本を不法出国し、1月8日にレバノンで会見を行ないました。会見の内容はひどいものでしたが、会見を通じてゴーン被告は2つの主張を世界に印象付けようとしたと考えられます。

 1つは、日本の司法制度は前近代的で問題が多いこと、もう1つは、日産のCEOを解任されたのは日産と日本政府が結託した陰謀によるものだということです。
 
 その目的はおそらく、前者の主張によって自らの不法出国を正当化し、後者の主張によって自分は有能な経営者であるという名誉を守ろうとしたのではないでしょうか。主張の中身はともかく、名経営者として世界に名を馳せた著名人の名誉回復に向けたコミュニケーション戦略という観点からは、正しいアプローチだといえると思います。

 そして、後者の陰謀説については、関与した政治家・政府関係者の実名を出さなかったのでその目的は達成できなかったものの、前者の日本の司法制度が遅れていることを印象付けるという目的については、それを報道した海外メディアの多さからもかなり成功したといえます。

 逆にいえば、ゴーン被告がコミュニケーション戦略である程度の成果を出したといえるからこそ、それに反論すべき日本の関係者もコミュニケーション戦略の観点から正しい対応をすべきだったのに、そうした戦略性が皆無だったように見受けられます。