メディアが注目した逃亡方法などは語らず、「日本の政府高官と日産の国ぐるみの陰謀」と主張しておきながら、「レバノン政府に迷惑がかかる」として高官の名も挙げなかった。

 無罪主張の根拠や日本の刑事司法批判も、これまで弁護人が発表した範囲を出なかった。

 会見をテレビで見た検察幹部は、「中身がなくてがっかり。裁判で白黒つける法の支配の基本から逃げた男に正義を語る資格なし」と皮肉まじりに切り捨てた。

 ゴーン氏の主張を額面通りに受け取る日本メディアの報道は皆無だったが、海外メディアの中には、「日産や検察から説得力のある新しい証拠がなければ、ゴーンは世論という法廷で無罪になるはずだ」(2020年1月9日付ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)などゴーン氏の「潔白」主張に理解を示す報道もあった。

 これには森雅子法相が「制度を正確に踏まえていない」と反論を同紙に寄稿する一幕もあった。

逃亡にはプロの「運び屋」と
「サポート組織」を利用した可能性

 内外メディアが伝えるゴーン氏の逃亡劇はアクション映画のようだ。

 帽子とマスクで顔を隠したゴーン氏が、保釈中の住居と定められた東京都港区の住宅を1人で出たのは昨年12月29日午後2時半ごろ。六本木のホテルで米国籍の男2人と合流し、その後、新幹線で大阪に移動。関西空港近くのホテルに入った。

 ゴーン氏は男たちが用意した楽器の収納箱の中に隠れて空港まで移動した可能性がある。同空港第2ターミナルのプライベートジェット専用ゲートの出国検査をかいくぐり、用意したプライベートジェット機(PJ)で午後11時すぎ、同空港を飛び立った。

 トルコ・イスタンブールで男たちと別れ、別の小型のビジネスジェット機に乗り換え翌30日にレバノンに到着した、とされている。 

 その直後に「キャロル夫人から、夫との再会は『私の人生にとって最高の贈り物』とのテキストメッセージを受け取った」というウォール・ストリート・ジャーナルによると、戦闘地域で拘束された人質の救出経験を持つ元米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の隊員を含む十数人のチームがゴーン氏逃亡に関わったという。

 チームのメンバーは数カ月前から日本を20回以上訪問して国内の10カ所以上の空港を下見。関空のプライベートジェット専用ゲートのX線検査機械が大きな荷物には対応していないことから、関空を脱出ルートに選んだという。逃亡計画には数百万ドルがかけられたとしている。

 検察関係者は「脱出支援チームのほか、中東などのサポートする組織も介在したとみられる国際的組織犯罪だった」という。

 ゴーン氏が、逃亡の詳細を語るのを避けたのは、チームやサポート組織から口止めされている可能性もある。