「麻布→東大卒」でありながら「プロゲーマー」という経歴が、世間の話題となったときどさん。しかし順風満帆だった彼のプロゲーマー人生は、ゲーマー20年目の2013年ごろに壁にぶつかった。格闘ゲームのeスポーツ化による環境の変化によって、全く勝てなくなったのだ。
2冊目の著書『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』では、そのV字回復の軌跡を紹介しながら、ときどさんが毎日やっている「努力のやり方」を紹介している。「圧倒的に変化が激しい」eスポーツの世界で戦うために、必要なこととは何か。ビジネスマンにも役立つエッセンスを語ってもらった。

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どん底に落ちた、大逆転負け

 僕が「失敗」「負けること」の大切さに気づいたのは、ある試合がきっかけでした。

 『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』で詳しく述べていますが、僕はプロゲーマーになってから思うように勝てなくなった時期がありました。大きな転機になったのは2013年の秋に行われた試合です。ゲームは「ストリートファイターIV」。リーグ戦残留のかかった注目の試合、僕は10戦先取の試合に臨んで敗北しました。相手は同世代のプロゲーマーももち選手。ストリートファイターIVでは2014年カプコンカップ優勝、2015年EVO優勝という偉業を成し遂げ、現在もトッププロとして活躍している選手です。
 使用するキャラクターの相性が僕に有利なこともあり、試合は6─1と順調に進みました。通常ここから負けることはありえません。しかし、結果はまさかの大逆転負け。完全に実力でねじ伏せられました。
 僕は格闘ゲームコミュニティーの中で、90年代からトッププレイヤーとして戦ってきました。相手のももち選手も同じくゲームセンター時代からのトッププレイヤーです。立場も実力も近い。そんな同年代のライバルに大勢の観客の前で叩きのめされたことは、衝撃的な出来事でした。

 当時、トッププレイヤーから置いていかれつつあることは薄々感じていました。大会成績もずるずる下がっていました。自分では何とかしようと努力していた「つもり」です。でもまだ甘かった。今までの延長でどうにか対処できないか。抜本的な変更ではなく、小手先でどうにかならないか。思えばその程度の努力でした。正面から現状に向き合っていないことに、自分では気づけていなかったのです。
 殴られなきゃわからない、僕はそういうタイプです。「いい加減に目を覚ませ」と、きつい一発をもらった。現実を見つめさせてくれた。ももち選手との試合からは、いいきっかけをもらいました。

 事実この敗北の前後で、取り組み方が大きく変わりました。今までのやり方は捨てて、ゼロから努力しようと決めたのです。
 「格闘ゲームが一番好きなのは自分だ。だから誰にも負けたくない」。もともと、そのような決意で臨んだプロゲーマーの世界でした。今こそ自分の至らなさを認めてやり直さないと、それだけで負けていることになる。そう思ったのです。