「麻布→東大卒」でありながら「プロゲーマー」という経歴が、世間の話題となったときどさん。しかし順風満帆だった彼のプロゲーマー人生は、ゲーマー20年目の2013年ごろに壁にぶつかった。格闘ゲームのeスポーツ化による環境の変化によって、全く勝てなくなったのだ。
2冊目の著書『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』では、そのV字回復の軌跡を紹介しながら、ときどさんが毎日やっている「努力のやり方」を紹介している。「圧倒的に変化が激しい」eスポーツの世界で戦うために、必要なこととは何か。ビジネスマンにも役立つエッセンスを語ってもらった。

正念場で強いのは「勝率の高い人」より「勝っても負けても打席に立ち続けた人」Photo: Adobe Stock

3割打者になれなくても、同じ数のヒットは打てる

 成果の数はチャレンジの数に比例します。単純に機会が増えれば自然に成果の数も増えます。
 もちろん「実力」が高い方が、成果を上げる確率は高いでしょう。しかし、その差は試した数で埋めることができます。

 10回打席に立つ3割打者と、20回打席に立つ2割5分の打者。どちらがヒットの数が多いかは自明のことです。この5分という「実力」の差を埋めることは、簡単ではありません。それに比べて打席数という「機会」を増やすことは、はるかに簡単です。ただ増やせばいいのです。
 もし1割打者だったとしても、まったくかまいません。

 これは、実力を上げることを怠っていいということではありません。せっかくの実力を示すためにも、積極的に実戦投入していくのです。

 格闘ゲームの世界でも、力はあるのに、大会にあまり参加しないプレイヤーがいます。ただ遊んでいることが楽しいのなら問題ないのですが、実績をあげたいのであれば、あまり望ましい態度ではないと僕は思っています。

 彼らの言い分は
「もっと練習してうまくなってからじゃないと」
「人前で見せられるレベルじゃないから」

というものです。ですが、自分の理想とする状態に仕上がるまで待っていたら、いつまで経っても参加できないことになってしまいます。またeスポーツの宿命で、いつまでも同じタイトルに人が集まっているとも限りません。旬のタイトルで行う大会だからこその熱量があり、そこでしか伸ばせない実力もあるのです。みすみす機会を逃すのは、実にもったいないことです。