大分で生まれ、小・中・高と地元の公立校、塾通いも海外留学経験もないまま、ハーバード大学に現役合格した『私がハーバードで学んだ世界最高の「考える力」』の著者・廣津留すみれさん。

ハーバードを首席で卒業後、幼い頃から続けているバイオリンを武器にニューヨークのジュリアード音楽院に進学、こちらも首席で卒業した。

現在はニューヨークを拠点に、バイオリニストとして活動しながら、起業家としても活躍している。

日本から突如、世界のトップ校に飛び込み、途方に暮れるような大量の難題を前に、どう考え、どう取り組み、どう解決していったのか?

著者が学び、実践してきたハーバード流の考える力について、自身の経験を下敷きに、どうすれば個人・組織が実践できるかを、事例やエピソードとともにわかりやすく紹介する。

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他の人に
同調しないで
意地でも違う
意見を述べよう

私は母と地元・大分市で、毎年夏休みの時期に「Summer in JAPAN」という6〜18歳の子ども向け英語セミナーを開催しています。

世界各国・日本各地から集まった小中高生たちが、100人以上の応募より選抜された12名の現役ハーバード生から、世界で活躍するために必要なスキルを英語で学ぶというプログラムです。

初日はまず自己紹介からスタートします。初対面のハーバード生たちと慣れない英語で会話して緊張するのは当然ですが、緊張して硬くなっている日本の子どもたちは、ほとんど何も話そうとしません。

その緊張をほぐすため、ハーバード生講師たちは英語で「好きなフルーツは何?」などと簡単な問いを投げかけます。

すると、ここで面白いことが起こります。最初の子が「ストロベリー」と答えると、そこからしばらくは「ストロベリー」「ストロベリー」「ストロベリー」と同じ答えが続くのです。

「好きなアイスクリームのフレーバーは何?」と質問を変えても、最初の子が「バニラ」と答えると、また「バニラ」「バニラ」「バニラ」と続きます。

これはSummer in JAPANに参加している他の国の子どもたちには見られない、日本の子どもならではの現象です。

好きなフルーツがイチゴではなくリンゴであり、好きなアイスクリームのフレーバーがバニラではなくラムレーズンだとしても、自己主張せずに前の人と同じように答えた方が無難だから、そうしているのでしょう。

「好きなフルーツは何?」と尋ねられて、根っからのイチゴ好きだったとしても、前の人が「ストロベリー」と答えたら、意地でも他のフルーツを挙げるのがハーバード生です。そして、その理由をとうとうと述べ始めるのです。

発言が求められる場面では、自己アピールにつながる何かをつけ加えて発信する。これは考える力を深め、相手に対して自分のバリューを高めるための実践的な鍛錬法でもあります。
英語では「イエス」か「ノー」で答えられる質問を「イエス・ノー・クエスチョン」といいます。

でも、単に「イエス」か「ノー」で答える人はまずいません。

「イエス」か「ノー」の後に、必ず理由をつけ加えるのが普通なのです。

「イエス」か「ノー」で終わってしまったら、「自分の考えがないんだな」と軽く見られてしまいます。

ハーバード在学中、私は1週間の感謝祭(サンクスギビング)休暇で友人宅に泊めてもらう機会がありました。

毎年11月の第4木曜日に行われるこの感謝祭は、アメリカ人にとって1年のうちでもっとも大事な家族イベントです。日本でいうところのお盆や正月のように、実家に家族全員が集います。

もともとは17世紀に米国への移住者たちが収穫を神に感謝したことから始まった休日ですが、いまでは身のまわりの人やものすべてに感謝する日となっています。

そのディナーの席で、七面鳥のグリルやパンプキンパイを食べようとしたら、何やら儀式が始まりました。

テーブルを囲む家族一人ひとりが「私は◯◯に感謝しています。なぜなら××だからです(I am thankful to..., because...)」というスピーチを順番に始めたのです。

普段、親しい友人や家族を前にあらたまった台詞を言うことなどない私は戸惑いましたが、「ハーバードで出会った友人とその素敵な家族に人生初の感謝祭ディナーにお招きいただき、友情、家族、ご縁に感謝します」と言うと、笑顔で拍手してくれました。

あとで知ったのですが、これはサンクスギビングで、どの家庭でもすることです。

アメリカではごく平均的な家庭や学校でも、このように幼い頃から人前で自分の意見を主張する環境が自然とあるわけです。

気心の知れた家族でも、以心伝心ではなく、自分の意見を「声に出して発信する」という習慣があるからこそ、大学でも職場でも堂々と自分の考えが言えるのでしょう。

イエス・ノーだけでなく、
その理由を加えて話していますか?