自動車業界の元カリスマ経営者、カルロス・ゴーン被告がひそかに日本を出国し、トルコに向かうプライベートジェットの機内で隠れていた箱からはい出たとき、最初に出迎えた人物の1人は、筋骨隆々とした元米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の隊員だった。
マイケル・L・テイラー氏(59)は治安工作員として複雑な、時に身の毛のよだつような海外での人質救出計画やその他の任務に当たり、キャリアを築いてきた。
テイラー氏はインタビューの中で、ゴーン被告の逃亡に自身が関与したかどうかや、もし支払われたとすればその報酬がどの程度かについて言質を与えないよう慎重に語った。ただ、ゴーン被告の事件に共感するところがあると同氏は語った。自身も米司法制度の下でつらい経験をし、結局、刑務所に服役したからだ。
「カルロス・ゴーンの苦境について知り、彼の心情がよくわかった。不公正な司法制度の人質になった点でわれわれは共通する」。テイラー氏はこう語った。
新年を迎える直前、数カ月にわたる準備をへたゴーン被告の脱出計画が実行された。手に汗握る「大逃亡劇」の詳細は今月初めにウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。
テイラー氏はたくましい二の腕に白髪交じりの髪、にこりと笑う表情が印象的だ。アルコールはほとんど飲まず、大抵はかみたばこを口に含んでいる。
同氏は米連邦当局の談合疑惑捜査に関連し、2つの容疑を認めた後、刑期を務めたことを思い出すと感情的になるという。友人らには自分が司法取引に応じたのは、ユタ州の郡刑務所に14カ月拘束されたまま裁判を待つという過酷な体験のせいだと語っている。この事件を手がけたユタ州のロバート・ランド連邦検察官は、「彼は間違いなく罪を犯した」とし、事件の被告は全員が同じく罪を認めたと話した。
これまでのところ、ゴーン逃亡におけるテイラー氏の正確な役割は判明していない。WSJが確認した旅券(パスポート)情報によると、同氏および同氏と活動を共にしている人物が、ゴーン被告を乗せてトルコに向かったプライベートジェットに同乗していた。また、同機の着陸後、彼らがイスタンブール空港にいたことを示す動画が新たに公表された。