新型肺炎Photo:Reuters

 中国は、新型コロナウイルスによる感染者が2700人を超え、肺炎による死者が82人に達したと発表した。しかし、一部の専門家は、未確認の感染者が何十万人もいる可能性があるとしている。今回の流行は、中国のトップダウン型統治機構の脆弱性が浮き彫りになり、その打撃は中国本土からはるか遠くまで及んでいる。

 2002年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した当時と比べ、中国の透明性は高まっている。中国の指導部が、外国からの支援の必要性を認識したことが、その一因になっていることは間違いない。しかし、中国の対応はまだ国際基準には達しておらず、当局者の説明は時間単位で変化しているようだ。

 科学者らは、今回のウイルス拡散について、武漢市の華南海鮮卸売市場で11月か12月に始まったのではないかと考えている。地元当局者は、人から人への感染を示唆する証拠があったにもかかわらず、当初はウイルスの感染拡大リスクを過小評価していた。中国の国家衛生健康委員会は、先週になってようやく、ウイルスが人から人へも感染し得ることを確認した。

 こうした対応の遅れが、医療スタッフの事前の防護対策不足を招き、ウイルスの急速な拡散の一因になった。武漢のある患者は、14人の医療スタッフにこのコロナウイルスを感染させたと伝えられている。伝染病学者らは、1人の患者から感染が広がる人数を2~3人と推定している。ウイルス感染した医師など「スーパースプレッダー」の場合は、十数人に感染を広げる可能性がある。

 こうした計算は、中国での感染確認件数が1週間で10倍以上増えた理由の説明になるかもしれない。しかし、最初から件数が過小に報告されていた可能性が大きいようにも見える。地元当局者は問題を強調すると、政治的リスクを冒すことになる。しかし、武漢市の市長は27日に、情報を制限しているとして中国政府を批判した。

 中国政府は現在、遅れた対応の埋め合わせをしようと武漢に1230人の医療専門家を派遣しているほか、人民解放軍は450人を動員している。武漢市衛生健康委員会は、24の総合病院を隔離用施設に変え、今月末までに病床数を6000増やす計画だ。中国政府は、多くの感染者が確認された都市に住む5000万人以上の移動を制限した。その数は、カリフォルニア、オレゴンとワシントンの3州の住民数に相当する。