さて、これは「徳の高い」行為だろうか?もしかしたら首をかしげる人もいるかもしれない。常安は、完全にボランティア精神で、寄付や嫌がられる仕事を買って出たわけではなく、ある程度、その後のリターンを計算していたはずだ。だが、得をする確証はないなかで、「損をすること」を自ら選択し、みんなが嫌がることを引き受けたことは、利他的とも言えないだろうか?

自己責任論、妬みの感情、ポイントによる「徳」の推奨…

 少しずつ、利己と利他、そして「徳」というものが、曖昧になってきたのではないだろうか?だが、本書はさらにあなたの頭と心を乱してくるに違いない。

 近年、増加しているように感じる、「他者への思いやり<自己責任論」なコミュニケーションや、「ずるい」と妬む感情から他者の利益を奪うような行為、そして、スコアやポイントによって外発的に動機付けされる「徳」についてなども、本書はどんどん切り込んでいく。

 読み終えるときには「徳」に明確な定義や正解などないことを、きっと痛感しているだろう。ただ、それについてあれやこれやと、ひとりひとりが考え続け、深めていくことでこそ、「徳」というものは磨かれるのではないかと思う。

 酔いどれ栗下さんが綴る「上から目線」ではない「徳」だからこそ、天邪鬼な人でも、きっと素直な気持ちで読み進められるはずだ。

「徳」のある人って?著名人や経営者から紐解く“利他”の精神

(HONZ アーヤ藍)