「マヌケ」という言葉は、「バカ」と混同されがちだけど、「マヌケ」という言葉を使っていたら人間関係も仕事関係も良くなっていくし、マヌケであればあるほど運はたまっていくよ!
そんな、欽ちゃんのあったかい言葉が詰まった本『マヌケのすすめ』が、発売になりました。この連載では『マヌケのすすめ』から、とくに心に響く部分を抜粋して、萩本欽一さんの言葉を紹介していきます。(撮影/榊智朗)
真剣と深刻は、響きは似ているけど大違い
最近は「仕事がつらい」「会社に行きたくない」と思う人が増えているらしい。
愚痴っぽく「あーあ、仕事いやだなあ」「会社行きたくないなあー」って言ってんじゃなくて、みんなすごく深刻な雰囲気が漂ってる。
気軽に「そんなこと言うなよ」とか「仕事なんて適当でいいんだよ」なんて茶化したら、ものすごく怒られそうだよね。
仕事も会社も、昔から面倒でつらいことは多かったけど、たとえうまくいかなくても、それほど深刻じゃなかった。
これって、何が違うんだろう。
深刻に悩んでいる人は気の毒だとは思うけど、深刻に悩めば悩むほど、解決するどころか話が余計にややこしくなると思う。
真剣に仕事に取り組むのは、もちろんすごく大事です。真剣と深刻は、響きは似ているけど大違い。
いくつも同時に番組をやっているときは、それぞれ真剣に寝ないでやってた。
そりゃあたいへんだったけど、でも楽しかった。
あのときに、もし「視聴率が先週より1%低かった。ああ、どうしよう」なんて深刻にやってたら、3日で嫌になってたと思う。
やたら深刻になっちゃうのは、やっぱり「マヌケ」が足りないんだろうね。
自分のマヌケを受け入れる気持ちも足りないし、他人のマヌケを大目に見る気持ちも足りない。
みんなが 「きちんとしなきゃいけない」と思ってるから、どんどん窮屈になっていく。
人間って、そんなにきちんとしてない。
失敗もすれば怠けたいときもある。
そういうのもひっくるめて「まあ、お互いたいしたもんじゃないから、できる範囲で真面目に頑張りましょう」っていう暗黙の了解があった。
だから、特別に頑張った人やすごいことをした人がほめられるんだよね。
「欽ちゃん、それは昔の話で今は時代が違うよ」って言われそうだけど、人間なんてそう簡単には変わらないと思う。
変わったのは、みんなが「仕事はちゃんとやらなきゃいけない」「ちゃんとやれないのは自分がバカだからだ」と思い込むようになったところ。
ブラック企業って、そういう真面目さに付け込んでくるわけでしょ。
最初から「マヌケな社員」を目指せば、ちょっとぐらいうまくいかなくても、深刻に悩まずに済みそう。
もちろん仕事は真剣に取り組んでほしいけど、同期に競争心を燃やしたり、上司の顔色をうかがったりする必要はない。
マイペースで頑張る人は、会社に必要な存在になれる。
お前いらないって言われたら、見る目がない会社だなって思えばいいよ。
(本原稿は、萩本欽一著『マヌケのすすめ』からの抜粋です)
*撮影協力/駒澤大学