松島幸太朗
昨年のW杯でヒーローになった松島幸太朗は、7月からフランスの強豪クレルモンに移籍する Photo:Stu Forster/gettyimages

昨秋のワールドカップ日本大会でチーム最多の5トライをあげて、日本代表を悲願のベスト8へ導くヒーローになった松島幸太朗(サントリーサンゴリアス)が、今シーズン終了後の7月からフランスの強豪、ASMクレルモン・オーヴェルニュへ移籍することが決まった。フランスで開催される3年後の次回ワールドカップへ、まもなく27歳になる快足ウイングが抱き続けてきた熱き思いと、海外移籍を決意した舞台裏で封印したもうひとつの夢を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

「高いレベル、強いクラブでやりたい」
クレルモンは松島の願いを叶える場所

 決して冗舌なタイプではない。トライを奪う刹那に閃光のような加速度を放ち、対戦相手を畏怖させるプレースタイルとは対照的に、ひとたびジャージーを脱げばシャイで牧歌的な雰囲気を漂わせる青年にひょう変するからこそ、松島幸太朗が残した言葉は重みを伴っていた。

「海外へ行くタイミングは今しかないと、僕自身、思ったので」

 万博記念競技場でNECグリーンロケッツと対峙した、1日のトップリーグ第4節を終えた直後の取材エリア。今シーズン終了後にサントリーサンゴリアスからフランスの強豪、ASMクレルモン・オーヴェルニュへ移籍することを決めた理由のひとつを松島はタイミングへ帰結させた。

 世界中を熱狂させた昨秋のワールドカップ日本大会でチーム最多、大会全体でも3位に入る5つのトライをゲット。通算9度目のワールドカップ挑戦にして、日本代表を悲願でもあったベスト8進出へ導いたヒーローの一人になった過程で、個人としても世界と戦えるという大きな自信を得た。

 トライ数だけではない。ボールを持って走った回数を示すボールキャリーと進んだ距離の合計となるゲインメータ、相手とコンタクトしながらも前へ出た回数のディフェンス突破数、そして相手タックラーに触らせずに抜け出した回数のクリーンブレイクですべてトップ10入りを果たした。

 30歳になる2023年にフランスで開催される、次回ワールドカップ出場ももちろん目指す。再びポイントゲッターを担い、日本代表をけん引していくために、さらに速く、強く、巧い選手になる。自らの現在地を見極めた上で、松島は3年後へ向けて2つの思いを胸中に抱いていた。

 クレルモンへの移籍が日仏同時に発表されたのは1月28日。サントリーの公式ホームページ上で発表したコメントの中で、松島は移籍を決断するに至った経緯をこう説明している。

<更に成長するために、「高いレベルそして強いクラブでやりたい」という気持ちと「自分が求められているところに行きたい」という思いがあり(中略)僕の求めているものがすべて一致したのがクレルモンでした>(原文のまま)