リーチマイケル
トップリーグ開幕戦ではリーチマイケルがボールを持つと「リーチコール」が響き渡った 写真:松尾/アフロスポーツ

日本中を熱狂させた、魂をほとばしらせた戦いから3カ月あまり。舞台をラグビーワールドカップ2019日本大会から国内最高峰のトップリーグ2020へ、桜のジャージーをそれぞれの所属チームのそれへと変えて、日本代表選手たちが帰ってきた。ほぼ満員となった聖地、秩父宮ラグビー場でナンバー8として先発フル出場を果たし、東芝ブレイブルーパスの開幕戦勝利に貢献した日本代表のキャプテン、31歳のリーチマイケルが踏み出した新たな一歩を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

「リーチコール」が何度も響く熱狂
秩父宮ラグビー場はほぼ満員に

 重低音のコールが降り注いでくるたびに、背中を力強く後押しされた。前半に4回。後半には7回。東芝ブレイブルーパスのナンバー8、リーチマイケルがボールを持って突進する度に、秩父宮ラグビー場のスタンドを埋めたファンが、待っていましたとばかりに同じ言葉を繰り返した。

「リーーーーーーーーーーチ!」

 グループリーグから快進撃を続け、史上初のベスト8進出を果たした日本代表に導かれる形で、空前の盛り上がりを見せた昨秋のラグビーワールドカップ2019日本大会。いつしか名物となったのが、日本代表のキャプテンを担ったリーチがボールを持つ度にスタンドを揺るがしたコールだった。

 ラグビー界にはもともと、南アフリカ代表の世界的な名手、プロップのテンダイ・ムタワリラがボールを持つ度に、身長183cm体重116kgの巨体から繰り出される強烈な突進を期待するファンが、日本語で「野獣」を意味するムタワリラの愛称「ビースト!」と大声をあげる光景が定着していた。

 日本大会にも出場し、準々決勝で日本代表を撃破。最終的には3度目の優勝を果たした南アフリカの主力を担ったムタワリラへは、日本の各会場で「ビースト!」コールが響き渡っていた。それに閃いたのか。日本の快進撃の象徴だったリーチへのコールが、自然発生的に広がっていった。

 感動を呼んだ数々の激闘から3カ月あまり。以前からのオールドファンも、ワールドカップに魅せられて生まれ、年末の風物詩、ユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされた「にわかファン」も、声を揃えて「リーーーーーーーーーーチ!」をとどろかせる瞬間を待ち焦がれてきたのだろう。

 全国の6会場で行われた8試合をもって、12日に幕を開けたトップリーグ2020。ワールドカップ日本代表31人のうち29人が、まさに「昨日の友は今日の敵」とばかりに激しい火花を散らす、国内最高峰の戦いの舞台は同時に、リーチコールが復活する絶好の機会となった。