――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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新型コロナウイルスの感染拡大が景気に及ぼす影響を把握しようとする試みは、必要であると同時に、現時点では無駄な骨折りかもしれない。
なぜ必要なのか。政策担当者や企業、投資家、一般の人々は、先行きがある程度予想できるような基準を必要とするからだ。さもなければ、危険な慢心に陥るか、あるいは逆にそれ自体が問題を引き起こすような過剰反応を示すリスクがある。
なぜ無駄なのか。感染がどこまで広がるか、誰にも分からないからだ。そうした不確実性に、経済予測が内包する不確実性を重ね合わせても、混沌(こんとん)とするばかりだ。
事実、感染拡大の経済的影響を巡る予想はばらばらだ。JPモルガンのエコノミストは当初、世界の1-3月期の国内総生産(GDP)成長率が年率0.3ポイント低下するとみていたが、現在は影響がもっと広がると考えている。UBSのエコノミストは、世界のGDPが2.5ポイント押し下げられると予想している。
エコノミストは実際の経済への影響をまだ確信を持って予想することはできないとはいえ、感染症流行がどのように経済に作用するか、また何を観察すべきかの経験知がある。