そして重要なのは、これらの海外で大成功しつつある企業や個人は、政府のクールジャパン政策の支援を一切受けていないということです。政策はダメだけれど制作する側のポテンシャルはまだ大きいから、アカデミー賞のような華々しい成果はないけれど、日本のコンテンツは世界中で評価されている、というのがクールジャパンの現実なのです。

ポテンシャルはある
コンテンツ政策を大転換せよ

 この事実から得られる教訓は明らかです。私は、アニメやマンガ、J-POPなどのいわゆるポップカルチャーのみならず、日本各地で異なる魅力を持つ食や伝統文化など、日本の広い意味でのコンテンツはいまだに大きなポテンシャルを持ち、政府の頓珍漢なクールジャパン政策の恩恵に浴せなくても、制作する側の力だけで世界中から評価されています。

 そして、多くのコンテンツ制作者がグローバル志向を強めつつある今だからこそ、クールジャパン政策を正しい方向へ軌道修正して、政策的支援が政府と繋がりのある一部の企業ではなく、才能ある個人やチームに向け、かつ短期的な成果を求めないようにすれば、10年後か20年後に日本のコンテンツがアカデミー賞やグラミー賞を獲得できるのではないでしょうか。

 今回のアカデミー賞で松たか子さんが歌っただけで、これだけ日本中が盛り上がったのを見ても、日本が国際舞台で存在感を示すことができれば自信を取り戻せるし、世界の日本を見る目も変わるのではないでしょうか。

 今の内閣の布陣は総じてあまり評価できない中で、幸いなことに、クールジャパン担当副大臣は平将明議員という自民党きっての若手改革派が務めています。つまり、今はクールジャパン政策を大転換する絶好のチャンスなのです。

『パラサイト』のアカデミー賞受賞がきっかけになって、コンテンツ制作者を支援する政策が正しく講じられるようになってほしいものです。

(慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授 岸 博幸)